貝界という魔境があるらしい。
今週のお題「何して遊んだ?」
どうも世の中には貝を趣味としてコレクションする「貝界」というものがあるらしい。
その収集は、500の壁と1000の壁があるらしい。
らしい、を連発しているのは聞いた話だからである。
というのも、先日「貝」に数十年ハマっとる友人と喋りこんだからであるな。
その友人というのは東京在住の女性で、いわゆる業界人なのである。
その人よりお芝居の招待を受けて、その感想など話しておったのだな。
でね、その人が貝を集めておるのはしっていたのである。
しかし、その熱量というかなんというか。。。
貝の世界はそんなに熱いものだったのか!
について語ってみようと思うのであるよ。
あるお芝居。
蓬莱竜太の芝居とだけ言っておこう。
いやあ、実にダサかった。
もう二度と観ない。
という話をダラダラしたあと、招待主であるSさんと色々話をしたのね。
岸田戯曲賞も堕ちたもんだ、と私が文句言ってたわけだ。
無常の世界にため息を付いておったところから
「普遍なるもの」について話が広がったわけであるな。
「普遍といえば貝でしょ」とSさんが言い出したの。
Sさんが貝集めをやっているのは知っていたのだけれど、そんな普遍性の話?とか思ってしまったの。
つまり、その熱量を私は理解していなかったのであるな。
S 「貝の世界って、世界中にマニアがいるのよ」
8 「ということは『貝界』ってのがあるわけですか?」
S 「あったりまえじゃない!」
8 「と言われましても・・・」
世の中には、熱く貝を求める人々が結構いるらしい。
8 「そもそも、どこで貝は売ってるんですか?」
S 「いろいろだよね。地方に行くときに地元の人に訊くと教えてくれたりね」
8 「宝飾品のお店とかですか?」
S 「いろいろだけど、ブローカーとか漁師さんとかね」
8 「ブ、ブローカーのいる世界なんですか?」
S 「高いのは200万くらいするしね」
8 「?」
S 「パプアニューギニアの貝で四種類あるのがあって」
8 「はい」
S 「三種類までもってたんだけど、四種類めと出会ったの」
8 「はい」
S 「8千円で出てたんだけど、8千円でニューギニア行けないじゃない?」
8 「そりゃそうです」
S 「だから当然買ったわけさ!」
8 「すみません。わかるような気もしますが、根源的にわからない気もします。。」
S 「なんでよー!」
ここで私は閃いたのであるな。
趣味の世界というのは、他者に理解できる範囲では偽物じゃないだろうかと。
理解できるってのは、他者の想像の延長線上にあるわけであるね。
あーわかるー!とか言ってもらえる世界というのはお子様の戯れであるわけだ。
もっとこう、孤独な極寒の世界を己の熱量で突き進む世界こそ趣味の世界であるな。
8 「ちなみに、レアものとか欲しくなるものなんですか?」
S 「あー、入手が難しい物はあるけれど価値は関係ないねー」
8 「つまり、プライスは関係ないと」
S 「あたしはコレクターだからさー。まだ1000の壁を超えられないひよっこだけど」
8 「コレクターの100の壁ってのは聞きますが、1000ですか?」
S 「まず500の壁があって、次の1000の壁は高いわねえ」
ここから、はまぐりの世界の深さがしばらく語られるわけです。
なにも、美しい貝殻を集めておるのでもないようです。
もっと言えば、すべての貝に美しさを感じておられるようですな。。
食用の牡蠣とかも例外ではないらしいのですな。
フランス在住の友人が日本に来る際に、牡蠣の貝殻を大量にお土産にしようとしたらしいのです。
しかし食用ですから、あまりの臭さに空港で半分捨ててしまわれたことに憤慨されておりました。
S 「しらばく土に埋めてからもってくりゃいいのにさ!」
8 「なぜかごめんなさい。てか、なにそれ!?」
貝というものは、それ自体が貨幣であった時代もあるわけで。
何億年も生き延びてさ、オーム貝はアンモナイトで同級生でさ。
内部構造もほぼ同じでさ。
絶滅したのがアンモナイトで、生き残ったのがオーム貝でさ。
化石からアンモナイトとオウムガイを見分ける方法 | 恐竜化石に関するコラム【三葉虫,アンモナイト,サメの歯】 から引用させていただきます。
だから、で?っていうね。。
そこで私なりの意見を言ってみた。
8 「陽が降り注いでいた。2億年前もここに」
S 「ニーチェだっけ?」
8 「いえ、覚えてないです。。その悠久を超える物語がいいのかもしれんですね」
S 「ああ、8さんはストーリー好きな人なんだ!」
8 「?」
ここで再度考え込む。
確かにそうであるな。
ものに対するとき、私はつい話しかけてしまう。
君はどうやってここまで来たんだい?
君が観た世界は、どの国だったんだい?
などと妄想が炸裂はする。
S 「そもそも、モノに『君』とか言っちゃうんだろうね!」
8 「確かに!」
その時私は確信したのであるな。
モノのストーリー、つまり歴史を私は欲する。
そしてそれ自体は下賤な発想なのだ!
モノを純粋に見つめると、そこにある数奇な物語など添え物にもならない世界があるようだ。
純度の高い、モノを見る目の世界。
8 「うーん、深い!」
S 「わかってくれる!?」
8 「いや、全然!」
S 「なんでよー!」
私にわかることは、そこに確かにある熱さだけであったのだな。
狂気と呼ぶ人もいるやもしれぬが、それは違うと思う。
プライスは考えない。
それは、買えるかどうかの基準でしかない。
なのでそう考えると、絵画が100億だろうか200億だろうか関係ないのであるな。
買える人からすれば、買うだけのことであるからね。
趣味がないとかいう人がいる。
老後のために趣味を持ちたいとかいう人がいる。
無理無理!
己の中から湧き出る何かに突き動かされないと、ただの辛いことになっちゃう。
趣味を持たぬ人は、趣味を持つ人の話を聞く世界にいる方がいいと思うのです。
深夜まで話し込みながら、私は思ったのです。
でもなぜ貝?
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