オジサンの恋は命がけだから怖い。
しかも死にかけの命がけだから無敵である。
一方、オバサンの愛は深い。
果てることのないエネルギーが見えそうで無敵。
この差はなんであろうかなあ。
最近友人からの相談で寒気を覚えたので、それをケーススタディとしてみる。
その名作的な悲喜劇を記して後世の人に残そうと思う。
オジサンはたいてい年寄り予備軍であるから、それなりの賢者な人もいるにはいる。
しかし、常に賢者は例外であるのが世の常。
理解できないオジサンの思考と実践を記すゆえ、若い人もさサッと御一読お願いしたい。きっとどこかで役に立つと思う。
社会派を自称する当ブログは、事実から真理を追求してまいります!
ふと考えてみると、ブログの更新はすっげー久しぶり。
ここでさ、つい「すっげー」とか使ってるのがイタイのは承知しておる。
ではなぜ使うのだろうか。
正確には使ってしまうのであるな。
これが怠惰さなのであろうなあ。
この怠惰という感覚、おわかりただけるだろうか。
これはオジサンの恋を読み解くキーワードだと思うのであるなあ。
今週のお題「名作」
オジサンの恋の相手には二種類あるようだ。
一つは若い娘さんにガチ恋系。
もうキモいがネットには腐るほど話がある。
たとえばこちら。
ネタだと思いたい気持ちは私にもある。
しかし、私は知っているのだよ現実を。
この手の男性はリアルに存在しておる。しかも無数に。
もう一つは手の届くとこで手に入れたい系。
この場合のオジサンは、志が低いと言うか老獪と言うか。
決して鯛は狙わない。
鯵を仕留めようとするわけだが、しかもサビキではない。
そこに妙なプライドが絡んで、鯵を一本釣りで狙うのだな。
で、今回ご紹介するお話はこの2つのハイブリッド。
そこそこ若い人妻への一本釣りを胸に抱いた男の哀しい話である。
事前情報として、私はその両者を知っておることはお伝えしておきたい。。
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ある日、久しぶりの友人からの電話。
友「ちょっと相談乗ってくれねえ?」
8「いいけど、どうしたの?」
友「電話ではなんだし、飯でもくおうよ」
8「まあいいけどさ、離婚でもしたの?」
友「えっ、なんでわかるの?」
8「マジかよ」
このあたりから嫌な予感はしていたのであるな。
別に離婚は珍しくはないし、そこでは驚かない。
しかし、我々の年代になるとそれで相談ってのもなんか違うわけよ。
これなんか別の話が絡んでんだろうなあ、と思ったわけ。
後日、ちょっといいごはん屋さんでのこと。
お互い近況など話し合ったあと、離婚についてもサラッと聞いたのね。
でも今回のテーマはそこじゃないわけよ。
友「でもまだ俺は諦めてないんだよね」
8「?」
友「勘違いするなよ、別れた嫁のことやない」
8「まあ、そりゃそうでしょうよ。じゃあ何を?」
友「恋だよ、恋」
8「ブッハッハッハ!ヒ~ゲラゲラ!!!」
その時の彼の顔は、この有名な写真に近い。
私は正直ちょっと怖かった。
とっさにお店の人に酒のおかわりを頼んだほどにだ。
私飲まないんですけどね。
8「まさか運命の人を探すとか言い出すの?」
友「そのまさかだけど、もう出会ってる」
友達がだんだん「元友人」になっていくような気がした。
けど、まあそれはいい。
もう笑えない空気があるのだけど、できれば笑い話にしておきたい私。
なんか中島みゆきが聞こえてくる気がする。
なんかこいつの瞳が目薬を差した直後みたいに濡れてる。
剥がれかけた鱗がキラキラ輝いているのだろうな。
不思議なことに、こいつのそれはきれいには見えないのだがな。
8「へえ、どんな人なの?」
友「お前も知ってんだろ、Mちゃん」
8「Mちゃん?誰、それ?」
友「ほら、〇〇○で☓☓☓のさ」
8「ああ!Mちゃんね!って、えええ?あの子結婚してたんやない?」
友「お前のキャラでそういうの気にするのか?」
8「まあ、できちまったものは仕方ねえから上手くやれば?」
友「相談はそこやねん。まだこれからやからどうすればいい?」
8「はあ?」
Mちゃんは40才前くらいの、まあまあきれい系。
彼女にこいつは横恋慕してて、それをどうやったら口説けるかの相談のよう。
つまりMちゃんとはなにもないわけだが、もう彼はMちゃんで頭がいっぱいなのだ。
さらに、Mちゃんは彼の気持ちを知らないようだ。
しかし彼の目は絶対的な自信に燃えている。
これはあまりにも怠惰だ。
8「あのさ、なんでいけると思ってんの?」
友「目を見ればわかる」
8「目。。。」
友「俺にだけ笑顔が違うわけよ」
8「彼女、小売業やん?」
友「がっかりだなあ。お前が人を見る目がないとはな」
今私たちは人間関係の極北の谷間に落ち込み、友人は氷をすり合わせて焚き火をしようとしておるようだ。
8「整理させてくれ。お前が離婚して恋をした。だからどうにかしたい。それも俺たちが昔から知ってるMちゃんで、彼女は旦那と子供がいる。ここまでOK?」
友「さすが話が早い」
8「で、お前はMちゃんもその気で、可能性高いと思ってる。OK?」
友「まさにそう!」
8「で、結婚したいとか思ってるの?」
友「Mちゃんが望むなら」
8「Mちゃんが、そもそもお前のことキモがってたら?」
友「それはない!」
8「なんで言い切れるんだ?」
友「目を見ればわかるよ!」
不毛だ。
あまりにも不毛だ。。
言い換えれば怠惰だ。
こいつの脳みそはもうこの怠惰に馴染んでおるのだろう。
こうなりゃ不毛ついでに攻めておくか。。
ここで酒をハードリカーに代えて一杯煽る。
やつにも勧めてグラスを空けさせる。
8「でさ、君は何をしたいんだ?」
友「正直彼女と一晩過ごしたい」
8「つまり、やりたい?」
友「めっちゃやりたい」
グラス一杯で正直になってきた。
更に飲ませる。
友「俺のアレには愛が詰まって固くなるんだから、彼女も喜んでくれるはずだ!」
8「もう一度確認させてくれ、まだこれからだよな?」
友「もう俺は準備万端だ!」
私は杯を空けながら、しばし考え込んだ。
なかなかキモいが面白い展開ではある。
しかし、Mちゃんが哀れでならない。
やつの頭の中にはすでに完成形となった二人の関係があって、それはもう信仰に近いようだ。
一人で自閉的に出来上がった思考は、怠惰の究極系である。
誰に何を言われようと変更更生の余地はない。
つまり楽なのだろうよ、それが。
ここで俺がすべきはなんだろうなあ。
こいつになにか言っても意味はないしなあ。
そうだ!Mちゃんにチクってやろう。
あとはMちゃんに任せよう。
まあ、これも怠惰な思考だが他に思い浮かばない。
まるで今のガザをどうやったら救えるかのほうが簡単そうだ。
8「じゃあ、君の恋に乾杯!」
友「ありがとう!でもMちゃんと俺の恋に乾杯な!」
背筋を寒いものが通り過ぎるが無視する。
そんなものは目の前のジンで消毒しちまおう。
酔っ払って解散して、俺はMちゃんにメールした。
LINEを知らないくらい会ってないし。
彼女からは驚きと知らせに対するお礼と、彼への罵倒が綴られていたわけだ。
一つの悲劇を防げた満足感に浸りながら、私はその夜気持ちよく眠った。
で、数日後のことである。
案の定彼から電話。
友「彼女は今の人生から変われないみたいだな」
8「なんかあったの?」
友「彼女の目を見たからわかった。苦しい目をしていたのや」
8「そうか、残念だったな。目でわかるとはさすがやな!」
私は彼女の切れ長の目を思い出し、そこに含まれた軽蔑と憐れみを想像した。
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さて、ここまでが事例報告なのである。
さらにここから分析に入る。
まあ、キモいの一言だけでいいような気もするのであるが。
彼は恋をした。
まあ、これは間違いないだろう。
ならば、彼が言うところの「恋」とはなんぞや?であるな。
彼に酒を飲ませ続けて深堀すればもっと聞けたであろうが、どうせ出てくるのは同じことであろうから、私が肝臓を痛める理由にはならない。
知らないことが出てくるのなら好奇心も維持できるが、回答がもう出ているのであるから、これまた不毛であるな。怠惰である。
衰えゆく肉体を持つ我々の世代。
もう少し若い世代もそうかも知れないが、肉体の衰えは精神的抽象概念で代替される傾向にある。
彼の性欲は現実的ではない。
いくらかは可能であっても、あの情熱を埋め合わせることは不可能だろう。
一晩に5回くらいやっても気がすまないだろう狂気を私は感じていたのだしな。
しかし、概念であれば無限である。
永遠不滅、果てることなし!
死して屍拾うものなし!が近いのだがな。
しかもMちゃんは既婚であるゆえ、その性的な部分だけを抽出して「恋」化させることも不可能ではない。
まあ、Mちゃんもその気だったらね!
こんな勝手な巻き込みとは、これ自体が視野狭窄であろうから老化なんすよね。
また、微妙に知り合いで、断りづらい相手を選んでいるあたりは悪意とも言えるわけです。もしくは韜晦と言ってもええでしょうなあ。
残り少ない硬くなれる時間を、成功確率の高い相手に賭けたわけですな。
ただ、この賭けは一方的に思い込み、そして一方的に間違っていたわけですが。
怠惰がそれを可能にする恐ろしさよ。
ここで話を下世話にまとめますとね、ティンコの抽象化と行動化なわけですわ。
オジサンの恋というものは。しかも死に近いから命賭けやすい!
彼がMちゃんの心苦しさを理解したことが唯一の救いでしょうか。
その理解の仕方に問題があるのはもちろんなんですけれどもね。
さて、彼をまた飲みにでも誘いましょう。
このまま友人でいられるか、「元」友人になるのかドキドキなんすけどね。
ただ書いていて思ったんすけども、
これ全部私の勘違いだったら怖いんすけどね。
今の所彼から連絡はないわけで。
お若い人は夢々「私、年上の人がタイプなんですー」とか言わないようにお願いしますよ。
オジサンは勘違いの塊ですから。
ああ、最後に彼の容貌を端的に示しておきます。
荒俣宏によく似てます。
今回オジサンの恋について話しました。
次はオバサンの愛について、と考えております。
(彼を責めることはできない。でも擁護もできない。若者へのためと思ってクリック!)