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CB1100にまずは乗ってみよう 究極のオートバイを目指す6

2022年も暮れようかという頃CB1100を手に入れた。

これでベース車は決まったという前回。

 

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ハイパワーを望むわけでもなく、タイムを競うわけでもない。

ただただ官能的な世界をどこまで追求できるか。

単純にして最難関な世界に踏み出した我々。

神戸のジャーニーという小さなバイク屋の吉川さんと私。

思いかけず手に入れたCB1100。

私がホンダ車を手にれたのは、40年ぶりくらいになる。

しかし、天下のホンダ車である。

手を入れる余地があるのだろうか。

それとも、ホンダ車は例のパターンに入ってゆくのだろうか。

「いいんだけれどねえ。。」

と手放してしまう、あの感じ。

古の言葉にあるように「下駄は履いてみよ」である。

では今回正直なハイレベルのインプレいってみよう!

 

 

 

 

オートバイの限らず、あらゆる機械には黄金比がある。

機械に限らず、生物にあるのだろうがここでは触れない。

少なくとも人間が扱う機械には必ずそれがある。

その比率は、扱う人の体の起きさに関係なく存在する。

ホンダというメーカーの偉大さは、全てのパーツから膨大なデータをとっていること。

彼らは常にその最適値を意識しているに違いない。

しかし、ホンダに限らず最適値を求める場合問題が出てくる。

 

それは、誰にとっての最適値なのか?である。

 

ホンダが企業である以上、そのコストに比例する利益が必要になる。

つまり、儲けである。

ライダーにとっての最適値が、企業にとっての最適値とは限らない。

しかも、その最適値に至る道程がコスト高になるのであれば当然削られる。

そこにある妥協は、人間の奥深くにあるものを刺激する何かを曇らせる時がある。

名車と呼ばれるオートバイの多くは、多分偶然から生まれた。

そこまでメーカーが意図していたわけでもあるまい。

 

と、小難しいことを書いてみた。

 

 

軽い調整をされたCB1100にまずは乗ってみた。

ストックのCBは殆どが完調だった。

チェーンを調整してオイルを入れ替えたくらい。

吉川さんの試乗感想では

 

「8さん、これはもう出来上がってんじゃないでしょうか。純正グリップヒーターも最高です!」

 

であったのだな。

しかし、私の仕事はここからなのである。

ダメ出しを高次元でせねば、吉川さんに申し訳が立たない。

小さなアラを見つけ出し、それを指摘してゆかねばならないのだ。

 

暖気を終えたCBにまたがり、ハーバーハイウェイに向かう。

最初の信号からの左折で、強烈な印象を受けた。

予想の3倍位軽く曲がるのだ。

曲がりすぎると言ってもいいくらいである。

 

これがホンダの本気なのだろうか。

 

白バイのようなアップハンドル。

低い車高。

低速では気持ち悪いくらい曲がる。

確かに、完成品に近いかもしれない。

250キロを超える車体とはとても思えない。

エンジンはなめらかで、挙動は湖の上を滑るカヌーのようだ。

 

これが21世紀のホンダかあ。。

あながち、あのエンジニアトークは正直なものなのかもなあ。

 

www.honda.co.jp

 

しかし、ここで納得するほど素直な性格ではないのだ。

 

せっかく吉川さんに手を動かしてもらっておるのだ。

私はこのマシンのダメ出しをせねば、ただのオッサンでしかない。

まあ、ダメ出ししてもただのオッサンでしかないのだがな。。。

 

さて、ハーバーハイウェイ。

知らぬ方もおられようから説明しておく。

神戸のポートアイランド六甲アイランドを結ぶ自動車道路である。

自動車は有料だが、オートバイは無料である。

これも近々有料化されるようだが。。

 

kuruma-news.jp

 

そしてもちろん危険なスピードコースである。

だから、当然私もここでは飛ばす。

それは今日初めて乗ったCBでも同じ。

5速ミッションであるこのCBでは、3000〜4000回転が楽しい。

そのあたりだと、高速道路での法定速度である。

じつにいいとこをついてきてるわね。

 

更にアクセルを開ければ、リッターマシンらしい加速も見せる。

でもそこは美味しい領域ではないようであるな。

季節は真冬なのに、グリップヒーターが実に優秀な働き。

さすが純正であるなあ。

 

それにしても乗りやすい。

それなりに速度も出るし、当然のようになめらか。

 

なん往復かしているうちに、不思議な疲労感を感じ始めた。

この快適を形にしたようなオートバイで、なぜ疲れるのか不思議であった。

そういえば、むかしアップハンドルのマシンに好んで乗っていたことがある。

その時とは違う不思議な疲労

フロントの接地感が、少し弱い気もする。

いや、そんなことでは説明がつかない感じ。

初めての感覚。

 

吉川さんのお店に戻り、色々話し合うが打開策は特にでない。

 

 

吉川さんは、その謎を解決するために車体を完全にバラす決断をした。

そしてこうなった。

 

 

フロントフォークも完全にバラされた。

 

 

そして、まさかのものを発見してしまう。

 

 

これは、フォークの底付近にある部品なのであるがセンターがずれていたのだ。

まさか、ホンダが?

目視でわかるレベルでずれている。

 

 

早速部品を取り寄せ、見比べてみる。

 

 

同じ部品で、右側が新品。

写真をどうしても肉眼ほどには確認しずらいのであるが、興味のある人はアップで見てもらいたい。

ちなみに、パーツリストではこの14番である。

 

 

普通はこういうとこまで分解はしない。

よって、前オーナーが所有途中でなにか起きたわけではない。

工場から出るときに、すでにセンターのずれた部品が組まれていたのであるな。

 

こういうことを見つけたから怒るとかはない。

これまでもメイドインジャパンのオートバイで、いろいろおかしいものに出会ったことはある。

組立誤差であったり、部品精度のあらであったり。

フロントフォークのセッティングが左右で違うことなんて当たり前。

しかし、今回のはちょっとひどい。

しかも、SHOWAの製品である。

CB1100の作り込みに対して、価格設定は低めであった。

コストはどこかが泣くことで設定できたのかもしれない。

抜き打ち検査の回数も減らしたのかもしれない。

新車が一番完成品として優れていると信じていた時もあった。

だが経験はその神話を否定する。

 

リア周りも徹底的にバラされて、同時に修正された。

そう、修正されねばならぬ箇所がたくさんあったのだ。

その過程で、このCBがどのような思想で作られていたかもはっきりしてくる。

これについてもグダグダ述べたいのだが、長くなるので割愛する。

 

この工業製品であるがゆえの矛盾と、工業製品ゆえに出せる価格。

人間が仕事として作る限り、それは仕方のないことなのだろう。

それを詰めてゆく吉川さん。

そして出来上がったマシン。

 

 

書けば気楽に思われるだろうが、莫大な時間とコストがかかっている。

そしてそれを与えられたマシンは、もちろん美しい。

 

吉川さんも

「やれることは全てやったと思っていただいて結構です」

と言っている。

 

季節が変わり、山の中を走っても塩化カルシウムを気にしないでいい頃。

梅の花が終わる季節。

つまり春を待って試走に出た。

まだ空気は十分に冷たいものの、グリップヒーターのおかげで快適であった。

 

全てが完璧なはずだった。

 

数時間走って、右手に違和感が出始めた。

おかしい。そんなはずはない。

しかし、肘から先の筋肉がだるくなってくる。

この鈍い痛みは、私の体調のせいではないはずだ。

 

私はある推論をする。

この痛みは、僅かな抵抗が手のひらにあるときに発生する感じだ。

軽いダンベルを、手首だけで動かしたあとのようだ。

だとすると、これはグリップヒーターが悪さをしているのではないか?

グリップヒーターは純正。

しかし、ゴムに加熱と冷却が繰り返されると起きる現象は硬質化である。

グローブとアクセルの間にわずかながら抵抗が減った結果、手はわずかに握力を入れ続けることになる。

それは乗っている私も気づかないレベルで起きている。

 

それを吉川さんに話してみる。

結論としてグリップヒーターを外すことになる。

そしてホンダが長年採用しているグリップに付け替えた。

 

 

我々は快適さを手放した。

我々が望んでいるものは快適さではない。

オートバイという機械が見せてくれる、最高の状態を味わいたいのだ。

快適さを否定はしない。

 

しかし、それは我々が望んでいるものではない。

 

 

たかがグリップの交換による変化は劇的だった。

吉川さんと私も、グリップ交換によってここまで変化すると予想していなかった。

小さなRでの小回りや、高速での切り返し、全てが向上した。

こんな小さなゴム部品で世界は変わるのか。。

 

そういえば、昔ライダースクラブでグリップ特集をやっていたのを思い出す。

1980年代だったと思うのだが、それを読んだときは「グリップで?」と思った。

今から思えば、なんと志の高い特集であったのかと驚嘆する。

ネットで検索すると、写真は出てきた。

 

 

ヤフオクで、結構でてくることにも驚きだ。

この変化に気づくやつは、かなり本気のライダーだ。

今から30数年前のネモケンは、本当にとんがっていたのだろうな。

 

年年歳歳花相似たり

歳歳年年人同じからず

 

吉川さんと交互に試乗して語り合った。

もちろん我々はまだまだだ。

でも一つずつでも成長できている。

グリップ一つで変わる世界を知ることができたのだから。

 

いや、待て。

グリップでここまで変わるなら、他の部品でもっとすごいこと起きるんじゃない?

我々は次のポイントをハンドル高の変更に絞ることにした。

 

つづきます

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