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神戸元町物語 ミスターボンドの二代目を惜しむ

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俺は悲しいのだ。

どれくらい悲しいかと言うと、

記事にするのに月日を要する程なのだ。


かつて、チャフでも何度かご紹介しておる、

神戸元町の誇るおしゃれの殿堂ミスターボンド。

 

chuff.hatenablog.com

 

その二代目、岡保雄さんが8月に亡くなられたのだ。

三代目の幸雄さんから、それをお聞きした時

不覚にも泣きそうになってしまった。

いい歳の大人がしてはいけない事であるが。

 

一つの時代が、またここに幕を下ろしたのだ。

そして、新しい幕が上がらねばならないのだ。

 

 

ミスターボンドさんと私のお付き合いは相当古い。

初代の岡保典さんが、まだお店に出ておられた。

岡さんに褒められたくて、プレスの効いたシャツで遊びに行ったのだ。

そして、ジャッジされていたのだ。

ジャッジされたかったのだ。

 

chuff.hatenablog.com

 

三代目の幸雄さんの表現を借りれば

 

「スタイルはトラッド、心はパンクなおじいちゃんでしたね」

 

まさにそうなのだ。

後にも先にも、初代のような人にあったことはない。

その方の息子さんが二代目の岡保雄さん。

岡さんとのお付き合いは長かった。

多くのことを教えていただいた。

ある時から店で見かけなくなり、三代目が店を回していた。

その時すでに闘病中であったらしいのだ。

しかし、岡さんはそれの口外を三代目に禁じていたらしい。

 

「お客さんも、困るだけやからね」

 

なんて、カッコいいんだ。

 

bond1947.com

 

岡さんが亡くなられたことで、元町の高架下の雰囲気は消えるだろう。

元町高架下問題というのは、実にややこしい。

現実では、闇市から始まったモトコーの歴史が消えつつあるってことだ。

 

www.excite.co.jp

 

闇市から始まったモトコー(元町高架下)は、権利関係がややこしい。

所有者が故人のままだったり、又貸しの又貸しであったり。

その一方で、安い賃料ゆえか、とんでもなく変なお店が生き残れた場所でもあった。

それが魅力となって元町は動いていたのだ。

 

ほんの20年ほど前まで。

 

その権利をJR西日本が一本化し、賃料をあげようとしていたわけだ。

名目としては、耐震工事によると言ってはいるが、実際はどうだろうか。

 

聞いたところによりと、賃料は3倍程度に跳ね上がるらしい。

今の神戸で、それで入れる店舗は少ないと思う。

それではモトコーや神戸の失速を招くと反対していた運動があった。

その先鋒に立っていたのも岡さんだったのだ。

 

怪しい本屋がなくなり、バッタ屋が消え、

胡散臭い古物屋も少なくなり、街はクリーンになりつつある。

でも、それを望んでいたのかと問われると何かが違う。

そのことを、岡さんは一番心配されておられた。

 

ミスターボンドも移転せざるを得ないだろう。

それも時代だと理解できなくもない。

 

私の友人で、パリコレに参加しているヘアメイクの男性がいる。

彼が言うに

 

「神戸と言ったら、ボンドさんですよね」

 

なのだ。

この店には、三宅一生だって、赤峰幸生だって、石津謙介だって一目置いてきたのだ。

それを支えてきたのが元町であり、モトコーであり、岡さん一家なのだ。

 

二代目亡き後、若き三代目にかかる重圧は察するに忍びない。

しかもファストファッションの時代にトラッド。

アパレル崩壊の時代にコロナという魔物。

そして、二代目の死。

 

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滅びつつある元町というもの。

その匂いと空気。

私にできることは何であろうか。

 

残ってほしいお店に、客として出向くことである。

結局それしかない。

常に経済に参加することなのである。

初代を敬い、二代目を忍び、三代目を応援する。

それでも、迫りつつある歴史の終焉には無力であろう。

 

だからといって何なのだ。

 

私は種を蒔く。

実るかどうかは問題ではない。

実らないと言って嘆くよりは、種を蒔く。

 

私はこの街が好きなのだ。

そして、岡さんのことを大好きだったのだ。

過去形であることが辛いのだが、それもまた仕方のないことである。

 

惜別 岡保雄。

美しい時間をありがとうございました。

 

(「男はカッコよくないとね」といつもおっしゃられておりましたね)