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トライデントのトラコンとは?究極のオートバイを目指してみる3

オートバイの電子制御は実は何をしておるのだろう?

結論からするとこうだ。

 

「何やってるかを理解するには不可能な何かをしている」

 

何かを理解するということは、理論的に理解するのとは別次元だ。

例えば、我々は三次元の世界で生きておるので四次元は理解できない。

でもそれは、我々の限界であって現実は結果を出しておるのだな。

例えば、そのスマホを扱うのに虚数は必要なのだ。

しかし、我々はそれを掴むことはできない。

つまり、わからないけど役には立つ。

どうだ?意味不明であろう?

 

その意味不明を見せつけてくれたトライアンフ・トライデント660。

 

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よろしい。

しかし、早々諦めがいいわけもない。

私の中に究極のオートバイが描けるかどうかは、どうもあのマシンを解析せねばならない。

思考が行き詰まっているときは、まず行動だ。私は、オーナーである焚き火の男の住む街にオートバイを走らせた。

イメージが出てきてから、早くも半年。

季節は、もう秋になっていたのだな。

 

 

私は、W650とZ1300を所有しておる。

結構こまめに自分でメンテをして、セッティングを出してはいた。

しかし、神戸は高架下のジャーニーというお店の吉川さんと知り合い、熟成度が加速したのだなあ。

なんていうかさあ。

こう、自分で満足している状態ってあるやない?

臨界点間近というかさ。

ある種の限界は感じておったわけだ。

それがなあ、そう思うのは甘いな。

煮詰めていったらさ、いろいろ変わっちゃってなあ。

w650のノーマルキャブに少しだけ手を入れてさ。

メーカーとは異なるアプローチでセッティングしたんだけどな。

その話しもしたいんだけどねえ。。

まあ、燃費が30近くになって、トップスピードが伸びたのよ。

今回岡山までは下道で燃費伸ばしたってのもあるんだけどさ。

帰りは岡山と広島の境あたりから、神戸の中心部まで1時間半よ。

1999年製造の空冷ツインでよ?

まあ、この話はややこしいんでまたの機会にな、良い子達。

 

さて、私は岡山に住む焚き火の男に会いに行った。

この裏寂れた男がそいつだ!

 

またの名を「大神龍」という。

ミスターバイク読んでた人は知ってんじゃねえかな。

まあ、それはいいや。

こいつがトライデントのオーナーなわけよ。

 

でさあ、ブルーラインってあるやん?

岡山の海辺の道。

そこで落ち合って、奴のホームコースである鷲羽山に向かったのよ。

奴も俺のw650乗りたいってんで、交換してさ。

夏に乗った時も思ったんだけど、トライデントってとらえどころ無いわけよ。

これまでのオートバイとは完全に異なる世界なわけ。

夏に調教したトライデントは、乗りやすくはあるんだけど何か独特なんだよな。

吉川さんのやった調整で、エンジンは元気だし足も悪くない。

でもなんか不思議でな。

 

さて、あっという間についた鷲羽山

奴は俺のw650で飛ばしに飛ばしている。

後ろから見ていて、実にカッコいい。

 

さすが、俺のマシン!

クールだ!

 

 

明らかに奴に歩がある。

奴のホームコースで、乗ってるのは俺のスペシャルだ。

実際奴はかなり速い。

そう思って走っているのだが、俺は難なくついていける。

鷲羽山のこのルートは、元々は有料道路だったんのが別ルートがついて無料になったらしい。

そのせいで交通量が少なく、コーナーのRもかなり大きい。

つまりは、結構なハイスピードコースなわけよ。

奴は3速あたりで全開走行している。

ストレートなら4速。俺のw650は5速でフケ切れば180は超える。

よって、まあそこそこな速度だ。

道は適度に荒れもあったり、凍結防止の溝もある。

奴はわかっているのだろうけれど、俺は怖い。

でも同じ速度で入っていく。

完全なブラインドコースなのだが、流石は俺だと思っていた。

 

ところが!

 

それはやっぱりおかしい。

トライデントの速度計はおかしな数値を出している。

前回同様、テイストはスィートだ。

これを言葉にするのが難しいのだけれど、全てがしっとりしている。

昔々、コンバースのキャンバスだのKスイスだのからエアマックス履いた時みたい。

しっかりグリップしながら、少し浮いているような感覚。

 

俺は尋常ではない速度で走りながら、不思議な不安に取り憑かれる。

初見でこの速度はやはりおかしい。

それに、ときおり聞こえるこの音はなんだ?

プラスチックが共鳴しているようなビビリ音が聞こえる。

出るタイミングが、よくわからないこの音。

速度でもなければ、回転数でもない。

 

なんだ?

 

そう思っていたら、奴が速度を落とした。

ネズミポイントがあるらしい。

 

遊園地を超えたコンビニで休憩する。

焚き火の男の走りを讃えながら、俺はこの奇妙な感じを話す。

前回の神戸のあとで、奴はサーキットにマシンを持ち込んだらしい。

その時も、不思議と他のSSマシンにそこそこついて行けたらしい。

この中間排気量のマシンで、SSに?

いくらTIサーキットだとはいえ、SSに?

謎の音についても尋ねてみたら、奴も不思議に思うらしい。

「どっか緩んでのかな、と思ったけどちがうんだよねー。あれなんなんだろうな」

 

折返して走りながら、俺はさっきの音を何度も聞く。

ビビッ、カタカタ。。

 

俺は、もしかしたらこの音はトラコンの介入音じゃないかと考えた。

この前は神戸のハーバーハイウェイで、速度が出すぎていた。

でも今は、まわりが山に囲まれてそこまでは速くない。

反響音で大きく聞こえている可能性もある。

でも、トラコンって音するのか?



トラコンとはなんぞや?の話をしておこう。

だいたいこんなものであるな。

ホンダで例を上げる。

https://www.autoby.jp/_ct/17296084

 

常にリヤを最適に駆動させ続けるコンピューターと思えばいい。

今はこれより遥かに複雑かつ多数のセンサーが、三次元的にデータをとって制御している。

さて問題は、このECU

どこまで何がどのように介入しているかが分からない。

俺に分かるはずもないよな、とも考える。

あのマルケスがしばらくレースを離れると、それだけで遅れてしまう世界だ。

 

number.bunshun.jp

 

俺の予想だが、もう彼はかつてのようには勝てないように思う。

そもそも、ドカッティがホンダを突き放せるとしたら、優位差は機械面ではないんだろうと思う。

多分電子制御の方の問題だ。

しかし、それでもホンダが負けるわけは?

俺の仮説はこうだ。

 

トラコンはライダーを学習しているのではないか?

 

マルケスがレースから離れたとき、ECUマルケスというマッピングマンを失ったのではなかろうか。

もちろんマルケスは天才だ。

マルケスが走れば走るほど、それはログされてゆく。

そのログが、彼を更に速く走らせるプログラムのベースになるのではないか?

ゆえに、マルケスがレースを離れれば、ハードが進化しても無意味なのだ。

その期間に乗れなかった分は、確実にログ不足となってゆく。

しかも、彼の存在は余人を持って代えがたい。

つまり、代替レーサーでは駄目なのがホンダ最大の問題ではなかったのか?

マルケスが天才ゆえ、他のライダーはマルケスのログに頼ってゆく。

マルケスが走れないなら、他のレーサーも一緒に沈むという悪循環。

ここに、先鋭化できないドカッティやKTMの強みがあると考えてしまうのだ。

 

 

仮にそうだとすれば、駄目なライダーの運転も覚えてゆくはずだ。

ECUにとっては良いライダーも悪いライダーもない。

膨大なログだけが残る。

そこから導かれるのは、そのログからセレクトされた「最適値」ではないか?

 

これはAIと同じ理論だろう。

 

下手が乗っても乗りやすいのは、それが下手用にプログラムされているからじゃないのか?

だとすれば、マシンの特性は存在するのか?

すべてが電子制御とデータに依るものになってゆくのか?

 

そして、今俺が乗っているトライデント。

元々は試乗車だ。

しかもエントリーモデルとして用意されたわけであるから、下手くそもたくさん乗っただろう。

山のようなデブリ、海のようなジャグ。

トライデントが初めて神戸にやってきたときに、当初はそれらがメモリーされていたんじゃないのか?

思い出してみよう。

トライデントが豹変したと思ったのは、ハーバーハイウェイでのあわや事故直前のときだ。

 

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あの前後、トラコンは残酷なほど学習したのかもしれない。

仮にトラコンが俺の開け方やブレーキを学習したのであれば、今のこの状況は理解しやすい。

つまり、初見のコースで違和感あるほどに俺が速い理由である。

今こいつは、もしかしたら俺に合わせられてるんじゃないのか?である。

そして前をゆく俺のW650 に乗った男。

随分乗りやすそうである。

もちろんW650も徹底的に俺用に作られている。

そこは吉川さんの技術の素晴らしさに助けられている。

 

二台のオートバイに同じことが起きている。

 

では、人間の技術は「学習による最適値」と同じものなのか?

限りある人生の中で繰り返される技術。

ログとして無限に繰り返される電子の学習。

電子制御は常に最適値なのか?

そして、最適値とは誰にとっての最適値なのだ?

あの奇妙な音は、介入と学習の音なのか?

それは未来の救いなのか?

それとも完璧な罠なのか?

 

 

俺は高速も乗りたくなって、焚き火の男に提案した。

「俺のW650は、高速でもすごいんだぜ」

「俺もそうじゃないかと思っていたぜ!」

と意気投合。

 

わざわざ遠回りして高速に乗る。

あえて乗らずとも良い高速に乗ったんだから、とりあえずは全開。

焚き火の男も、俺の前をすっ飛んでゆく。

俺のマシンは速いだろう?

で、トライデントは?

 

またもや変な動きに戻っている。

フロントとリヤがバラバラだ。

荷重を変えたり、回転数を変えてみたり。

俺のWが、俺を置き去りにしてゆく。

あーもう面倒だ。

とにかく回転を上げて速度を乗せちまえ!

まるで、ずっと横風を食らってるような不安定さなのだ。

しかし、俺の前を走る俺のW650は全く振られていない。

やはり、トライデントの挙動がおかしいのだ。

 

速度を書くと問題になるやもしれぬから、コンビニのこのアイスの値段くらいの速度と書いておく。

 

 

おわかり?

なんとかその速度を維持したまま10分くらい走っていると、またあの魔法にかかった。

 

ドッヒューン!

 

なにこれ?

なんで急に安定したの?

まさか、高速未体験だったからなの?

でもサーキットでって。。。

 

ああ、そうか!

ジャイアントコーン速度を10分も出せるコースは岡山にはない!

トライデントは、初めて経験したのだ。

いや、初めて学習したのだ。

そして最適値を出した瞬間だったのだと思う。

 

俺はW650の最高速を知っている。

奴はそれに近い速度が出ている。

それを一気に抜いてゆく。

 

ズッツドン!

 

六速レッドゾーン手前。

その速度に飽きてきた頃、奴の家が近づいてきた。

下に降りると、やはり聞こえる謎の音。

 

奴の家の裏山の山小屋が今夜の宿。

 

 

マシン談義をしながら飯と酒だ。

山に日が沈む。

 

 

奴に俺の仮説を話してみる。

あの音は、廉価版故に聞こえたのかもしれぬ。

若干設計が古いが、お嬢さんのZ900RSでも似た現象が起きた。

 

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あれが走りを成立させている可能性について。

マシンが学習する可能性について。

ライダーが全てを支配する時代の終焉について。

 

奴はしばらく考えてこう言った。

 

「難しいことはわっかんねーよ!」

 


こいつ、面白いなあ。。

俺は5分くらいは笑った。

まあいい。

一つの答えは出た。

 

俺は究極を望んではいるが、最適値は求めてはいなかったようだ。

 

つづきます。

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