トライアンフ・トライデントで感じた何かを確かめに岡山に行った前回。
さんざん、ダッセーだのなんだの言って惚れ直したのもつかの間。
俺が求めているものではないことを確信してしまったのだな。
電子制御があれの源なら、最新のマップを持つ最新のマシンがいいことになる。
最新を求めるのは悪いことではないし、その時代の先端なのは間違いはない。
ピークパワーの凄さも、トラコンの威力も、その魅力も知っている。
私は元々そっちに行ったことがあるのだ。
というよりは、どっぷりその世界にいたのだ。
この見るからに猛禽類なオートバイ。


市販車史上初のパワーウェイトレシオの1キロ切りのマシン。
2004年型のZX10R。
それをチューンし、後軸で200PSを出していた。
一応バックトルクリミッターはついてはいたが、獰猛すぎるマシン。
Fブレーキはついてこれず、ZZR1400用にしたのだったな。。
私は愛しておったのだな。。
だから嫌いではないのだ。最新は。
このマシン、常に近くに死を感じるものであったなあ。
さて、最新を否定しない私である。
よってトラコンも否定はしない。
しかし今回だけは違うのだ。
吉川さんと数年来のお付き合いの中で、私の方向性は変化した。
あっ、吉川さんってこの方ね。
あたり前のことなのだが、機械は正確に組まれてこそである。
しかし、正確に組まれるとはどういうことを意味するかご存知であられます?
ケニー・ロバーツが乗っても満足。
フレディ・スペンサーが乗っても満足。
ロッシが乗っても満足。
その世界がどれほど「ありづらい」ことかご想像できます?
あらゆる可動部分が、きれいに稼働する。
あらゆる締付けトルクは設計値を正確に示し、エンジニアが隠したであろう思想まで右手が感じる世界。
ライダーはそれを極限まで引き出して乗ることができれば、そこには何が見えるのだろうか?
コースでタイムを縮めるわけでもなく、ピークパワーも求めない。
その上で、ライダーの感じる世界はなんなのだ?
強いて言えばこれである。
バカモノ!
それはマロンだ!
このようなことを言い始めている私は老いたのだ。。
人生の残り時間は少なくなり、ライダーとして機能できる時間は更に少ない。
だから必要なのだ。
何を?
ロマンをだ!
ここでGTロマンのアフィとか貼ると思った?
ノンノン。。
年寄りはしつこいのだ。
つまりロマンだ!
みんなその気でおればよいのだ。
真っ赤なスカーフは誰に振られたかなど問題ではないのだ!
いかんな。
本題からずれておる気がする。。
?
そもそもなんだっけ?
ああ、トラコンな。
岡山で確信した翌日、焚き火の男こと大神龍と一緒に別の山に。
やつはRCBレプリカに乗り、俺は自分のW650。
なんとかという天文台のある山道。
あいつ、あのロングタンクのマシンをよく乗りこなしておるな。
後ろから見ていても、ライディングがきれいだ。
それを伝えると、奴は
「いやあ、すんげえ乗りやすいのよ!」と。
いやそれはないだろう。。。
これだよ?
なんというか、ヴィジュアル重視に振ってあるから乗ると何かおかしい。
しかし、奴は全開でかっ飛んでゆく。
それを後ろから見ながら、俺のW650もかっ飛んできたのだ。
その速度域は、自分のマシンならではのもの。
やはり、今あるマシンを組み直して煮詰めるか。。
しかし、このW650は完成の域にある。
Z1300は、あれ以上やるとなればバランスが崩れてしまう。
いや、待て。
キャブの設定を見直してから、W650での超高速維持はしていないな。
帰り道に試してみるか。
自宅まで約200キロ。
一時間半のアベレージで走ってみた。
もちろん、無給油無休憩だ。
16リットルしか入らないタンクで、神戸箕谷あたりでリザーブ。
リザーブは4リットルはあるはずだから、燃費は20近いはず。


うひょひょ!
20km/L超えてるじゃねえか。。
あの速度域で、空冷の650ツインでこれかよ。。。
すげえな、吉川セッティング。。。
あの速度域とは、これがコンビニで売られている数字をご覧いただきたい。
以後、ジャイアントコーンkmと隠語化。
駄目だぞ、そんな速度で走ったら!
フィクションだぞ、フィクション!
大神龍にさっそく自慢しながら電話する。
その時彼はこう言った。
「おお速いな!アホじゃねえ?」
なぜ君は感動を共有してくれぬのかね?
ああ、一方通行な想いであったよな。。
そこで私はこう返した。
「まさか君はもっとかかるの?」
さて。。。
私は自宅で珈琲を飲みながら考えた。
豆は神戸の誇る萩原珈琲のマンデリンだ。
全くこの話とは関係ないのであるが、私が好きなので応援しておる。
いや、今回はそうではないのだ。
珈琲の話をする回ではないのだ。
トラコンがどうの、究極のオートバイがどうのという回である。
思い返してみれば、最も素性を知っているマシンはこのW650だ。
1999年に新車で購入以来、すべての履歴を知っている。
すべての転倒と修理、そして管理を私はしてきたのだ。
今は吉川さんという知己を得ているが、ずっと孤独に自分の手で触ってきたのだ。
つまり、もっとも信用できる履歴なのだ。
しかし、私のW650はすでに4万キロを超えている。
エンジンの内部には手を入れてはいない。
一時期、同爆のカムが出るとの噂があった頃にチューンを検討したのだが。。
結局そのハイカムは幻となり新車以来ストックのままである。
オイル関係は常に良いものを選んでは来たが、もちろん内部は傷んでいるだろう。
これ以上をこのマシンで望むなら、残るはエンジンだ。
私はこのマシンを、5000キロ走行時点で手放そうと思ったことがある。
新車時のエンジンは好みではなかった。
今装着しているマフラーになるまで、いくつかの社外品を試したがだめだった。
浅いバンク角の結果、二本へし折ってしまったのだ。
今のマフラーにして、バカほど飛ばしていたときに突然好みになったのだ。
なんというか、ガラッと変わった。
このあたりのことは、本当に謎だ。
W650に乗ったことがある人は、私のマシンに乗ったら驚くと思う。
吉川さんとの出会いにより操安性が格段に向上したが、エンジンはその前からよかった。
あのエンジンを組み直してリフレッシュすれば、逆にどうなる?
良くなるかどうかは不明だ。
そもそも、どうして今これほど回るエンジンなのかは謎なのだ。
これに関しては、吉川さんも大神龍も他の友人も謎としている。
もちろん、私にも分からない。
うーん。
こいつでいくべきか。。
車両代金をエンジンのフルオーバーホールだと考えれば。。
うーん。。
ここで思い出していただきたい。
究極のオートバイのベース選択にはいくつかの条件があったのだよ。
これらの条件を満たすオートバイは案外少ない。
そこで私はW650ならばと考えたわけだ。
しかし、よく考えてみればもう一台ある。
ZX10Rを買い戻してはどうだろうか!
トラコンは入っていない。
初期のインジェクション。
パーツもまだあるだろう。
セカンドオーナーはサーキット用にしているらしい。。
幸い、今のオーナーにも話しを通すコネはありそうな気がする。
仮にそれが可能なら、俺はやはりスピードの修羅の世界に戻るのか?
つづきます。
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