市原悦子さんが亡くなって
青さんは思考によって、その哀しみを
越えようとしておるのです。
青さんの、日本昔話しを
超絶こねくり回すシリーズ。
今回は「夕鶴」です。
ではさっそく!
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どうも。
思考実験、青です。
さて、今回は「鶴の恩返し」であります。
なんとも切ないお話でありますが、
現実に起きた物語として語るのであれば、
無視できないポイントが
少々あるものまた事実。
そこで、その少々のポイントを
僅かばかり変更する事によって、
いつかどこかであった物語にならないか、
と妄想してみた次第であります。
まず、例によって物語を整理しますと、
イ・何かが危機に陥っており、救われる 。
ロ・救われた何かが恩返しに訪れる。但し、正体は隠している。
ハ・恩返しで、直接的現金意外の経済的利益を莫大に与える。
二・上記の方法は、恩を返される側にとって知られてはいけない。
ホ・ある程度の段階で、恩を返す側の正体が判明しなくてはならない。
ヘ・判明した結果、決別という形で物語が終わる。
こういったポイントを
クリアしておけば、「鶴の恩返し」の
物語は達成されるのではないでしょうか。
さて、本論へ入っていきますが、
先ず何よりも大前提であります
「鶴の恩返し」が、
たま出版でもない限りは
「現実的でない」と談じられる事を
処理しなくてはなりますまい。
まず、取っ掛かりの部分
なのでありますが、
鶴が罠にかかっている部分を
どうにかする必要がありますな。
現実的に、鶴が恩返しを
することは考えられません。
仮に、鶴が恩返しをしたと
仮定した場合でも、
絶対に人間に変じることはないのであります。
そうですねぇ・・・
後からの展開を考えて、
落ち武者狩りを逃れる
やんごとないご一家、
という事にしておきましょう。
これが「鶴」の代りですな。
落ち武者狩りの網が迫り、
まさに捕まる寸前というところで、
初老の男性が登場します。
彼は、近くの百姓でありまして、
極めて善良で慎み深い人物であります。
彼は、一目見て彼らが
落ち武者である事を知りますが、
女子供を哀れと思い、
家へ連れ帰って
粗末ながらも暖かい食事と、
一晩の宿を貸し与え、
匿ってやることにいたしました。
当時の落ち武者は、
懸賞金がかかっておりますから、
百姓などの割のいい副業です。
血なまぐさい宝くじ
といった感があったようでありますが、
彼は幾許かの金品よりも、
憐れの感情を優先したわけです。
実に朴訥な好人物でありますな。
土地勘がありますので、
彼は落ち武者ご一行を案内して
無事の山越えを達成せしめたのであります。
イ.何かが危機に陥っており、救われる
は達成されましたな。
次は
ロ・救われた何かが恩返しに訪れる。但し、正体は隠している
救われたのは落ち武者の一家でありますが、
正体を隠して現れる必要があります。
幾ら初老とはいえ、
一度見た顔を早々忘れる事はありますまい。
さぁ、どうしましょう。
そこで、救われた落ち武者一家の中に、
幼子がいたことにします。
鶴が変化して娘となり、
助けてくれた恩を返すという話を、
救われた幼子が成長して娘となり、
助けてくれた恩を返す、
という話にするわけです。
なんとなく、無理の無い
展開のような気がいたします。
気のせいですか?
そうですね!
ともあれ、そういうことならば、
成長次第で顔は変わるもの。
なんと言っても、初老という
年齢設定がここへ来て
生きてくるわけであります。
初老が老人と化すまで
十年としますと、
六歳の子供が十六歳。
完璧な年齢の推移でありますな。
さて、これで、正体を隠して
恩返しが可能になりましたが、
背後関係をきちんとしておかないと、
いまいちすっきりしません。
つまり、巧く逃げおおせたのであれば、
わざわざ素性を隠して
恩返しに来る理由が無い。
ましてや、恐らくは姫であろう少女が、
一人でくるには、結構頭を使って
理由を考えなければなりません。
うーん。そうですね。
ありがちではありますが、
少女は復讐を企んでいる、
と言う事でどうでしょう。
巧く逃げおおせたものの、
手負いの父はまもなく死に、
慣れない力仕事で娘を育てた母は、
その苦労から病に臥せって
まもなく亡くなった、と。
自分の境遇や家族の状況を作り出した、
「敵」に対して一矢報いたいと思うのは、
武家の娘としては
立派な心がけといえるのではないでしょうか。
記憶がしっかり残っている年齢として、
六歳というのは中々いいところです。
巧く話がつながってきましたな。
で、復讐をするにも準備が必要。
そういえば、あの時救ってくれた
おじいさんは、土地勘もあるし、
あそこへもぐりこんでおけば
目立つ事もないかもしれない、と。
計算があってのこと。
さすが、武家の娘であります。
さて、雪が山々を白く覆い、人気や獣が少なくなったころを
見計らって、少女が再び山を越えて
老人の山小屋を訪ねます。
口実は皆様ご存知の通り
「道に迷って困っています、雪が深く途方にくれておりまして、一晩の宿をお貸し願えませんか」
この年寄りはびっくりするほど
いい人でありますから、
爺さん婆さん共に喜んで迎え入れます。
さて、泊り込むことに成功した鶴姫は、
肩を揉むやら膝を擦るやら、
色々と労わります。
半分は計算ながら、
早くに両親が亡くなってしまった身の上が、
人のいい老夫婦に父母を
重ねていたのかもしれません。
その心根が通じたのか、
老夫婦は長逗留を勧めます。
「雪解けまで…」と
娘は留まることに。
みたいな展開で
鶴姫は長期逗留の足がかりを得ます。
ハ・恩返しで、直接的現金意外の経済的利益を莫大に与える。
の部分ですが、
毎度毎度、ちょっと長くなりがちの文章を、
前後編に分けることによって、
読み易くしようという心意気で、
今回は二部構成としたいと思います。
というわけで、とりあえずここまでを前編。
残りは明日の早朝にでも、
と考えておりますが、
これは決して締め切りのばしの
裏技ではないという事を書き添えて、
いったん筆をおきます。了
つづきます。
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夕鶴と、カムイと、拝一刀を
足したような世界になってまいりましたな。
武闘派夕鶴。
何も、悲しい話で
しんみりする必要もないんでございますよ!
血しぶき飛ぶ人情噺!
乞うご期待!
(それにしても、最近恩返しって聞かないよね?そうでもない?でクリック!)