
蚊に「噛まれる」という表現は完全に関西のみらしい。
お題「地元では当たり前のものなのに、実は全国区ではなかったものってありますか?」 - はてなブログ
全国的には「刺される」「食われる」のようね。
というような内容を、先日東海地方の古い友人に指摘された。
この友人言うに、「『噛まれる』のほうが、あえていい感じ」なのだそうだ。
さてこの友人、名前を通称ゴムという。
彼とは古い付き合いなのであるが、今回話をしたのはもう十数年ぶり。
聞けばゴムはアルコールの深い闇に落ち、三途の川からの帰還組になっていた。
断酒して今のところ成功しておるようであるな。
そんな彼であるから、当然頭は多少いかれておるのだな。
もともとこいつはちょっと頭が良いと同時にイカれている奴ではあった。
その才能のキラメキは当時かなりのものではあった。
なので「噛まれる」ことに対するその言葉に私は反応したのであるな。
高文脈言語である日本語は、その奥に二重三重の意味を持つ。
ゴムの言う「噛まれる」には、他にどんな意味があるのだろうね。
8「やっぱ、『噛まれる』ってエロいわけ?」
ここで不思議に思われた諸兄に説明をしておこう。
古来日本に残された和歌というものがある。
8割は恋の歌で、その半分がエロの歌。
それを宮中とか京都でいまのSNS的にやり取りしながら、人や社会の運命が決まっていった歴史があるわけじゃな。
よって、日本語を深めてゆくと大体がエロに帰結するわけ。
こういう説明なくともゴムの理解は早い。
コ゚「8っさん、噛まれたことないのけ?」
8「噛まれたことかあ、あるけれどもなあ」
コ゚「あれ噛まれる場所によっていろいろ違うからなあ」
8「お前、なんの話しとるの?」
コ゚「ティンコを蚊に噛まれる話やろ?」
8「はあ?」
やっぱ本物は頭の壊れ方が違うなあ。
そもそも、私の人生においてティンコを蚊に噛まれたことあったかどうか。
場所によって違うということはだな、こいつは複数回噛まれておるわけだ。
蚊が飛び交う空間に、そんなにティンコを露出させておったのであろうか。
少なくとも私の人生においては、それほどない気がする。
蒸し暑い夏の夜にそれを露出させるというのは、別の目的によって然るべき場所に収納されていたはずである。
しかしゴムはこう続ける。
コ゚「塾の帰り道の夏の夜に」
8「ガキの頃じゃねえか」
コ゚「そうあれはまだ夏が夏としてあった時代のこと。スイカで涼を取れた時代や」
8「なぜにティンコを塾の帰り道で?」
コ゚「愚問だな、ムラっとしたわけだ。そこで俺はティンコを半ズボンの外に出したのだが、それが風に揺れているうちに不安になった」
8「聞いてるだけで俺は不安になる」
コ゚「そうだろう?そこで俺は一計を案じたわけだ」
8「一計を案じる前に、しまえ。馬鹿者」
コ゚「まあ、そう責めるな。ガキの時代のことだ。俺はおもむろに靴下を脱ぎ揺れるティンコに被せた。もうこれで俺は平気になった」
8「お前。。。」
彼は私よりは若いが、50はとうに過ぎている。
私はてっきりアルコールがこいつの頭をバンしたのだと思っていたが、天然だった。
続いて彼はこう言ったのだ。
コ゚「竿たちぬ、君いきめやも」
狂ってやがるぜ!
コ゚「しかし、幸福な時間はいつも短い」
8「つまり、蚊?」
コ゚「そうじゃ、蚊じゃな」
ゴムに言わせると、噛まれる場所によって人間が感じるものは変わるらしい。
まず袋。
コ゚「袋はかゆい。しかし掻きむしるほどに、一種の味わいというかそういうものがあり、まあ『いとおかし』的な風情がある」
8「ねえよ!」
次に亀頭
コ゚「で、先の先。これはなんというか、掻きづらい。しぼむとなおのこと苦悩がある。『もののあはれ』とはまさにあれ」
8「聞いてるだけでモスキート音鳴ってそうだな」
さらに、竿の中央部
コ゚「次は真ん中あたり。これはこれで味わいがある。ぷくっと膨らんだ感じが、可でもあり不可でもあり、趣がある」
8「茶道具の解説を聞いてるような感じだな」
最後はいわゆる蟻の戸渡り
コ゚「一番趣き深いのは蟻の戸渡りであろうかのう。握ると中指の先にコリッと膨らみができてのう。掻けば描くほどに、痒みと同時に気持ちよさがぐっと胸を締め付けに来る。なんというか、淡い初恋を思い出すような感じで、『いと懐かし』とでも言おうかのう」
8「お前、どんだけ出してるんや?」
これらの発言を聞いていると、確かに「刺される」という言葉にはない複雑な体験様式ではあるな。
よって「噛まれる」という言葉がふさわしいような気もする。
では「食われる」ではだめだろうかと考えてみる。
食われるというのは、圧倒的に敗北的なパッシブ感がある。
己が無力なゆえに犠牲となる印象であるな。
では「噛まれる」となるとどうであろうか。
「噛まれる」というのは、確かにいくつかの此方側の失策の結果かもしれない。
しかし、そこに勝敗はなく痛みを伴うが共生存の世界ではないだろうか。
とすれば、その奥にはエロスとタナトスが乱立する世界がないとも言えぬ。
なるほど、これがゴムの言うところの「噛まれるがいい感じ」なのか。
ああ、俺もまた狂ってやがるのか!
コ゚「その時に俺は感じたわけさね」
8「な、なにを感じたのだ?」
コ゚「おれは地球に恋してると、な」
ぶっ殺してやろうかと思ったが、惜しい才である。
8「なあゴムよ。俺ブログやってんだけど君も書かない?」
コ゚「何だよ、そんなのやってたのかかよ」
8「君の書く文章は昔から素敵だった。しかし今の君の言ってることは世界に向かって開かれるべきだと思うよ」
コ゚「うむ、それもよいかもしれんな。久しぶりに書いてみるか」
8「グーグルを敵に回すような気もするが、埋もれさすには惜しいな」
コ゚「じゃあまず8っつあんが蚊の話書いてくれよ。まずそこからだな」
というわけで、今回の文章をつらつらと書いてみたわけだな。
今外は雷鳴が響き、大粒の雨がバラバラと音を立てて降っている。
雨の匂いが立ち込めて、世界の終わりのような暗雲が広がっている。
そんな中、私は蚊に噛まれるティンコの場所についてキーボードを叩いているわけだ。
マトモじゃいられねえな。
ということで、ゴムも参加して投稿してくれるようです。
期待していてくださいね。
(約束守れるかどうかは不安だけど、それも噛まれたと思ってクリック!)


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