女心と男心、深ーい河がある「軽蔑」
もうね、ひどい話なの。
でもね、まあそういうことだよね、
って納得もできちゃうというね。
知ってます?「軽蔑」っていう映画。
原作はイタリヤ文学のモラヴィア。
もうね、原作もやりきれない感じなの。
マイトレイ/軽蔑 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 2-3)
- 作者: アルべルト・モラヴィア,ミルチャ・エリアーデ,住谷春也,大久保昭男
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
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このやりきれない原作を、
ゴダールが変態として、映画化しちゃった。
主演はべべこと、ブリジット・バルドー。
またこれがかわいいの。
こういう乳繰り合いから始まるんです。
男は脚本家、ポール。
妻は、カミール。
うら若きべべが演じています。
当時のセックス・シンボルの
作り込まれていない身体のエロ。
これもなかなか。
ポールは若い女と結婚したので、
映画の仕事も引き受けます。
新しい家も買うんです。
そこから、戻れない悲劇が。
それがこちらです。
お金のために、アメリカ人から
オデッセイアの映画脚本を
引き受ける旦那。
そのアメリカ人ジェリーを演じる
見たことあるんじゃないですか?
いかにもアメ公な感じ満載。
もうね、いやらしいの。
んで、秘書の背中を机にして
小切手にサインするところなんか、
「ああ、戦争には負けたくねーな」
って感じなの。
この作品の中で、監督役の
フリッツ・ラングが本人役で。
あのメトロポリスを作った人です。
ジェリーの家で食事でもとなり、
ポールはジェリーの車に
乗っていくことを勧めます。
ジェリーはもう口説く気満々です。
アメリカ人らしくマニュアルの車を、
不器用に乱暴に扱うジェリー。
ポールは遅れて、ジェリーの家に到着します。
その直後から、カミーユの態度が変わっていきます。
ポールが来るまでの30分に、何があったんでしょう。
ジェリーの助手の女性に軽口をたたき、
それをカミーユも見ます。
このあと、どうしようもない不毛な口論。
聞いているだけで陰鬱な気分になる
終わりのない欺瞞と攻撃。
そして、冷たい妥協。
ジェリーは皆をカプリ島の別荘に招きます。
ここで、さらにカミーユの心は
ポールから離れます。
そして、ポール抜きでヨットに
カミーユを誘うジェリー。
それを勧めるポール。
まだ迷っているカミーユ。
だのに、ヘラヘラしているポール。
これで決定的に、カミーユは
ジェリーの女になります。
旦那に覗かれていること承知で、
ジェリーとネトネトなキス。
もうね、このあたりの
エロのないエロっぷりがね。
もうたまんないわけです。
ジェリーを問い詰めようとして、
軽くかわされ、気まずい部屋。
屋上で日光浴するカミーユを
詰問するポール。
カミーユは理由を言わないまま、
明らかに拒否します。
小さな事をあれこれ取り上げ、
お互いを傷つけ合います。
そして、ジェリーの肩を持つわけです。
まあ、そうでしょうけど残酷ですな。
もうね、このときのべべを
張り倒したくなるわけですが、
またこれがとんでもなく
かわいいという悪魔っぷり。
男は打ちひしがれ、
女は自由に泳ぎます。
で、結局カミーユは
ジェリーとローマに逃げることに。
その途中で慣れない運転で交通事故死。
それでも映画オデュッセイアの撮影は続き、
ポールもカプリ島を離れます。
ギリシャ古典を読んだ人は、
まあいろいろ思ったりするかもしれません。
女心の複雑さを、ゴダールが
実にいやらしく撮ってるので、
疼くものがあります。
全体に漂う、圧倒的なお金の力。
カプリの別荘なんか、結構絶句もんです。
ああ、フェラーリなんかは
こういう背景で生まれてきたんだなあ、
と想いを馳せます。
一旦すれ違った想いは、
どうやっても修復できないものです。
少ないセリフと、むせるようなべべの可愛さ。
この一連の雰囲気は、なんとも複雑な世界。
私、原作を十代に読んでいるんですが、
分かるわけないんです。
すがる男と、かわす女。
そこに流れる軽蔑という潮流。
こういう蒸し暑い夜とか、
魅入られるのもいいかもしれませんよ。
しかし、このバルドーが
こうなるという。。
最近じゃこうなってるという。。
人生というものの可変性と、
不確かさをいろいろ考える夏です。
いかがです?
(最近べべは極右思想に入ったそうで、まあ変化してるわけですね。でクリック!)
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