今年初の「神戸元町物語」になりますね。
昨年の暮れ、まだ体調を崩すまえのこと。
お互いちょっとしょっぱい想いをした男二人で、
飯でも食いに行こうか、となりました。
一緒だったのは、今や関西広告写真の巨匠、
カメラマンの西山君です。
しかし、12月29日の元町は、
なぜかどこも満員。
「青柳」ウナギは、なんと売り切れ。
「香美園」満員御礼。
「ロッグキャビン」時間切れ閉店中。
うーむ。。。
そこで「グリル一平」に流れ、
ビフカツを食べました。
ここのビフカツ、美味しいですよ。
でも、その話はまたの機会に。
食後、久しぶりに一杯飲むかと、
浜のほうへ歩く。
「おお、M&Mまだやってんだ。ここいい店だよ」
「ジャズ喫茶ですね、行ってみたいです」
「俺もずいぶん久しぶりだな。カッコいいママさんがいるんだよね」
時間は、夜の8時くらいだったでしょうか。
昔はよく来ていたんです。
場所は中華街の西側に出た角を、
少し南に行った左側の二階です。
久しぶりにこの階段を上がります。
店内に入ると、客は私たち二人だけ。
目つきのきついあんちゃんが、カウンターの中にいます。
なんとなく、つんけんしてます。
気にせずカウンターに座り、
話しかけてみます。
意外に気さくなあんちゃんです。
話していくうちに、いろいろ分かってきます。
お店の中は、全然変わっていません。
ママさんは、数年前に57歳で亡くなったこと。
客であった現マスターが買い取って、店を継いだこと。
50~60代の客の、あまりの横柄さに、辟易していることなど。
なるほど!それで警戒されたわけだ!
「ホント、いやな年より客は出禁にしてんですよ」
「俺ね、ジャズ喫茶って日本独自のもんだから、無くしたくないんですよ」
「リーマンショックで、元町がすっかり変わってしまって」
「ママについてたお客さんは、俺のこと見下すんですよ」
「なんだかんだ言って、若い子は素直に音楽楽しんでますよ」
「でも負けないですよ。若い子たちのほうが、よっぽど素直だし礼儀もいいし」
「あっ、写真とか苦手なんで、撮らないでください」
(ゆえに、今回の写真はひろいものです)
「ママさんが亡くなって、すごくいろいろ考えたんです。ショックでね。そこでいつ死ぬか分かんないんですから、人間好きなことやらなきゃ!と思ったんです」
もう、堰を切ったように熱く語ってくれるわけです。
西山君も私も、なんだかすっかり嬉しくなってしまいましてね。
つい、普段は飲まないお酒を、多めに飲んでしまいました。
そうなんですよね。
マスターの言ってる事わかります。
私と同年配から上の世代は、
なんというか、
すぐマウントばっかりしたがりますからね。
相手が飲食店だとかだと、それが特にひどいです。
やたら声がでかくなり、下品なことを武勇伝みたいに語り、
説教したり、モノを知らないのに偉そうにしたり。
私思うんですが、態度の悪い客なんて、
叩き出せばいいんです。
おしゃべりに花を咲かせていると、
少しずつお客さんも入ってきて、
気づくとほぼ満席に。
「珍しいですよ、こんなのは」
いやあ、嬉しかったですよ、私。
若い人はそうでなければいけません。
やりたいことをやって、
とんがって、意地を張って。
もう、おじさん、応援しちゃうぞ!
亡くなったママさんは、きれいな方で、
無口で、カウンターの隅で、
いつもワインを飲んでおられました。
私は、仕事が一番忙しかった時期に、
なんとなく足が遠のいていたのですが、
ここ10年で、いろいろあったわけです。
後ろでは、リー・モーガンが流れていました。
込み合ってきたこともあり、
グラスに残ったハーバーソーダを飲み干し、
店を出ました。
ではそのリー・モーガンの演奏をどうぞ
恋人に、ステージの合間の楽屋で、
拳銃で撃ち殺されるという、
ドラマティックな死に方をした、
彼のトランペットは、
お店によく似合っていました。
西山君と、寒い夜の街に出た時、
氷雨が軽く降っていました。
ジャズ喫茶はこうでなきゃね。
M&MのFBは
頑張ってほしいと思います。
私の好きな「元町」の匂いで満ちていましたね。
お昼は普通に喫茶店ですよ。
こういうお店、大好きです。
(生意気で、突っ張って、頑張ってる!そういう人好きです!さあクリックです!)