そろそろちゃんと書きますよ。
「国」というのは、役人である自分の所属先のことです。
だいたいね、唐の時代の人ですよ。
大安定時代です。
少なくとも彼らのいた時代に唐は滅んでいません。
少なくとも、大戦乱時代ではないんです。
では、杜甫が書いた「国破れて山河在り」はなんなのでしょう?
戦争に敗けたってことじゃなく、内乱で荒れたって感じでしょうね。
そのはるか昔の、大変もめていた時代でも、
楚の国出身で、魏の国に仕えるなんて当たり前です。
ですので、国民という感覚なんてあるわきゃないんです。
民は租税される人のことでしかありません。
一方、私たちが生まれた時には、私たちは「国民」であり、
すでに国境がある「国家」だったわけです。
ですので、国家がそのまま「国」という感覚が身についています。
しかしですね、この「国家」というものは、ここ最近の考え方なんですよ。
では「国家」とはなんでしょう。
今回は真面目に行きますよ。
例によって参考文献です。
菊池先生はもっと評価されていいと思いますけどね。
なんだかマイナーなポジションですが、問題は中身です。
この本の冒頭にある文章から、いろいろ打ちのめされます。
歴史家のベネディクト・アンダーソンからの引用です。
想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行 (ネットワークの社会科学シリーズ)
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今世紀の大戦の異常さは、人々が比類のない規模で殺し合ったということよりも、途方もない数の人々が自らの命を投げ出そうとしたことにある。
ここでの「今世紀」とは、20世紀のことです。
これはなかなかすごいことなわけです。
それまでは「祖国」が、これほどまでに広大な規模をもっていないことが、
普通だったからこそ、アンダーソンは疑問を持ち、
それを「想像の共同体」として実態のないもの、ととらえたわけです。
菊池はそれに対して、
どのようにそれが出来上がっていったのかを、
この本で考察しているわけです。
つい、19世紀の初め当たりまで、
どうも巨大なナショナリズムは、
存在していないようなのですね。
では、兵は何のために闘ったのかとなると、
具体的に知っている人々や、
地域愛郷主義あたりまでなわけです。
割と想像しやすいですものね。
しかし、戦闘が国民によって行われ始めたのは、
歴史的にはかなり最近のことです。
基礎はオランダがつくり、具体化したのはスェーデン。
時の国王グスタフ・アドルフが完全な徴兵制度を作ります。
これは1620年のことです。
逆に言うと、この対象となる人々が人類史上初の「国民」となるわけです。
じゃあ、それまでだれが戦争してたのか、となります。
これね、世界的に見ても、多くは「傭兵」なんですね。
それくらい、傭兵は長く戦闘の歴史に存在します。
これは、洋の東西を問いません。
戦争を傭兵に任せている時点で、「国家」というものは存在しません。
そして、傭兵の歴史をさかのぼってゆくと、もともと誰が戦争をしていたか?
という根源的な問いに突き当たります。
私の想像では、これは日本でも同じことが起きています。
ちょっと覚悟してください。
コペルニクス的転回ですからね。
戦争に行くのは義務ではなく、戦争に行ける既得権を持つ人の独占権だったのです!
単純に言うと、貴族ですね。
日本でいうと、武士がこれにあたるでしょうか。
その前はもろに貴族です。お公家さんができる前ですね。
もちろん、奴隷を戦わせるとか、
戦争に敗けた地域の人間を連れてきて戦わせるとか、
農民を徴用するとかはあったでしょう。
でもね、戦争に行くと「褒美」が発生するわけです。
具体的には土地の権利とか、交易の権利とか、いろいろですね。
それを下々にやるわきゃないんです。
ですので、その分かりやすい例として言えるのは、
新しい土地をもらえるから、戦争に行くのは権利だった!
ということですね。
どうです?
驚きませんか?
私は驚きました。
そして歴史はすぐに変遷します。
でも死ぬのは嫌だよね。
金で雇って代わりに行かせよう!
それくらいの銭はあるからね!
こういうのがすぐに登場します。
ローマ帝国も、実はかなり初期からゲルマンの傭兵だらけなんですね。
これがだいたい16世紀頃までの、世界中の戦争の主流です。
もちろん、日本も例外ではありません。
では、私たちの今の感覚の「国家の誕生」とは、いつの話になるのでしょう?
それは次回に。
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