男が、とある鉄火場で体験した、啖呵の世界。
さあ、引き返すなら今です。
人生の暗闇と、日本語の不思議さを知りたいなら、
続きを読んでください。
そうでない方は、ここまでということで。
怒号が飛び交う。
カン筋を立てた男達が、鼻の先をヤニ臭い脂汗で鈍く光らせながら、
カン筋を立てた男達が、鼻の先をヤニ臭い脂汗で鈍く光らせながら、
理屈も皮肉も全くない言葉で、相互に罵り合う。
ここは鉄火場、玉のやり取り、目が血走る。
汗と、胃酸と、酒と、足の裏。
汗と、胃酸と、酒と、足の裏。
全てが入り交じった空気の中、俺は目を閉じている。
頭で考えると下手を打つ。
頭で考えると下手を打つ。
気分で手を出すと火傷する。
ここは鉄火場、金のやり取り、待ったなし。
俺は目を開け、くわえ煙草に火をつける。
一人の男が手を挙げる。怒号が止まる。
男はそのまま立ち上がり、男達を見下ろす。
煙草を吸い込むと、薄暗い部屋に火が赤く浮かぶ。
どこからそんな声が出るのか、濁った低さで唸りだす。
「ううううううう」
部屋は静寂さを増し、男の吠えるような、声とも呼べない音だけが響く。
「グダグダと、ウルせえ!ここは俺の仕切りだ!文句ある奴は前に出ろ!」
空気が急激に冷め、緊張が高まってゆく。
ここは鉄火場、金のやり取り、待ったなし。
俺は目を開け、くわえ煙草に火をつける。
一人の男が手を挙げる。怒号が止まる。
男はそのまま立ち上がり、男達を見下ろす。
煙草を吸い込むと、薄暗い部屋に火が赤く浮かぶ。
どこからそんな声が出るのか、濁った低さで唸りだす。
「ううううううう」
部屋は静寂さを増し、男の吠えるような、声とも呼べない音だけが響く。
「グダグダと、ウルせえ!ここは俺の仕切りだ!文句ある奴は前に出ろ!」
空気が急激に冷め、緊張が高まってゆく。
それと同時に、悪意が暗い部屋に満ちてゆく。
詰め込まれた男達の悪意が、塊となってその男に飛びかかろうとしている。
俺は部屋の角にゆっくりと移動して、壁の二つを味方にする。
少なくとも後ろから俺がやられることはない。
その空気を察して、さらに男は息を吸い込み啖呵を切る。
その空気を察して、さらに男は息を吸い込み啖呵を切る。
「俺のを舐めるな!」
ああ、「の」が入っちゃったのね。
まちがっちゃったね。。
「の」は、凄いなあ。
「の」って、形が完全に「の」でしょう?
「いった」と「いったの」では風情が違うでしょ。
この「の」を「ぬ」にすると、「いったぬ」だから、
なんだか偉そうでしょ?
俺、今の所「の」が最強じゃないかと思うんだな。
あっ、この人テンパって、
「の」が入っちゃったのね。
そしたら、オカマバーの乱パーか、なんかになっちゃったわけですね。
なんだか分からなくさせる「の」。
「ゆ」もいい感じだけど、「の」には負けるよね。
そうそう、これが「負けるの」ってなったら、もう勝てない感じがする。
春の日だまり
夏のかき氷
秋の稲穂
冬の雪
これって「の」なの。
ああ、「の」で終わると、俺までポエティックな「の」よ。
春の日だまり
夏のかき氷
秋の稲穂
冬の雪
これって「の」なの。
ああ、「の」で終わると、俺までポエティックな「の」よ。
偉いなあ、「の」。
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ひらがなでかくと、そういうことですの。