「なあ、聞いてくれるか?」
「ああ」
「うちのさ、あいつ疲れるんだ」
「前向きでさ。いつも励ましてくれる。でも明るい事しか言わない」
「そうだな。ある意味では強いな、あの人は」
「それはある意味では、きっと弱いんだ」
「その強さを、求められている気がするんだ」
「そいつは大変だ」
「だろ?」
「疲れて暗くなるなぁ」
「お前、相変わらず容赦ないなあ。毒々しいなあ」
「俺、自主的に暗いからね」
「そうだなあ」
「いつかさあ、どこかに書いてくれよ、この話し」
「でも、ばれるかもよ。誰が読んでるか分からないし」
「そこはそれ、お前嘘つきだろう?」
「まあ、そうだな」
「上手くごまかしてさ、あいつが読んでも分からないようにさ。頼むよ」
「なかなか難しいな」
「バカみたいに明るいってのは、ずるいんだよ。嫌いじゃないけどね」
「明るすぎると、暗いんだよ」
「お前、ぼんやりと明るい」
「詩的だ」
「詩人だもの」
「誰が?」
「この世の人全てが、と言ってみる」
「確かに」
「お前、どれくらいだと思う?」
「残りか?」
「そう」
「数ヶ月だと思う。場合によっては一ヶ月」
「だよね」
「仕方ない」
「こんな会話いいよね」
「積極的に後ろ向きだしね」
「薄暗い感じがいい」
「上手くやってくれ」
「いつもそうしてるつもりだよ」
「知ってる。お前は嘘つきだもの」
「ひどいなあ」
「お前は完璧に適当なんだよ。完全無欠な適当さなんだ」
「その俺を呼んだのはお前だ」
「だから呼んだんだ」
「上手くやってくれ」
「上手くやるよ」
「頼んだよ」
「分かってる」