古い友人が会いに来てくれました。
胃薬を手土産に。
バカ話から、いつしか
深刻な会話になってゆきました。
現役、超有名大企業社員の語る、
現状と今後。怒涛の第6回。
退職と再雇用についてです。
ではさっそく。
前回のお話はこちら。
「なんか、暗い話になっちゃったね」
まあ、そうでもないよ。それを暗いとは言わないんだ。
「じゃあ、何が暗いのさ?」
そうだな、俺が見てる再雇用制度の現実かな。あれは暗い。
「まあ、具体的に聞こうか」
そろそろ見えてくるわけさ。具体的に定年が。俺らの世代は、まあ年金は逃げ切れるだろう。でも65歳までは、まあ自力で食わなきゃいけない。実際は食えない人間だらけだから、再雇用されるわけだ。
「ある種の福利厚生ってことか?」
それもある。でもさ、実際退職の日に、花束もらってさ、送迎会までやってもらってさ。その翌日から、同じ机に出社できる神経は、今の俺でも、実は理解できないんだ。
「何週間か、一旦休まないのか、あれは?」
いわゆる普通の感覚で言うと、そう思うよな。通常は有給も残ってる。しばらくほとぼり冷めた頃に、お恥ずかしながらっていう感じなら、俺もわかる。でも実際は違うんだ。
半分の給料で、同じ仕事を普通にやりに、ただ来ている人多いんだ。
俺もわかんないんだから、彼らの心情を聞かないでくれよ。あれは全くわかんないんだよ。多分、現役のときから、ずっとあまり仕事してなかったから、アレできるんじゃないかな。
それに、そうなると、さっき話した無関心さが、より激しくなってくるね。
「俺達は自営業者の子だから、今ひとつサラリーマンのこと分かってないよね」
ああ!お前もそう思う?
俺も思うんだけど、サラリーマンってのは月給制だろ。あの制度にある文化は、三代、最低でも二代続かないと、心底わかったことにはならないんじゃないかな。
文化というか、なにかしら不思議なものがある。
「かなり個体差があるのは事実だと思うよ」
専門家から見てもそうなら、やっぱりそうなんだろうな。
うちみたいな大企業は、ホント、何代もいいとこのサラリーマンの家系が多いんだよ。その中で育たないと分からないものがあって、その分俺たちは不利とも言えるぜ。
「まあ、そうだな。で、どうなのよ、そのサラリーマンの再雇用は?」
だから、さっき言ったみたいに、気持ち悪いんだよ。
全っく人のことを助けなくなるよね。
あれは気持ち悪いもんだ。でも、その違和感を感じている人は少ないな。それに、こっちも気を使うじゃないか。この前まで上司や先輩だったの人に、コピー頼めないんだよ。その気まずさを、経験しているはずなのに、あっという間に忘れて机の前でなにかやってるけど、何やってるかわかんないわけさ。
「で、お前もそうなりそうってことか?」
なかなかキツイの入れてくるな。
そうなるかどうかは分からないけど、いつも退職のことは考えるようにしている。
そのイメージは大事だし、実際チャンスは伺ってるな。
そうでないと、ああなっちまうんだな、って例は本当にたくさん観てるからね。
つまんねえ奴多いよ。
「で、そのつまんねえ奴にならないために、どうしてんのさ?」
中小企業診断士を取って、俺は中小とフリーで絡もうと思ってる。もっと言えば、中小から話がくれば乗るし、この国のためにも中小という鉱脈は、実はとんでもなく大事なんだ。
「おいおい、なんだその正義感は?」
まあ、それも正直半分。もう半分は、安い給料で働きたくないってのはあるよな。そこまでして残るべき場所じゃないと思う。定年まで居るかどうかは、状況次第だけどな。
そこで、俺自体がもってるコネクションが、実際にどこまで俺のものかを、今検証してるって段階だな。
「看板の信用か、お前の信用かか。そこ案外わかんないよね」
そうなんだよ。俺自身も検証しているところだよ。知らないうちに、俺が実力と思っているものが、ただの夢幻って可能性もあるからな。ここを勘違いすると、えらいことになる。
最終的には、日本型サラリーマンのスタイルは、いずれ死滅すると思う。無理があったんだよ、そもそも。
いわゆる、ゼロサムになるだろうね、間違いなく。
「あれもおかしいよな。理論上は勝者敗者は同数のはずなのに、現実では非常に偏ってる」
だよな。そのカラクリとか、いろいろ見えてくるじゃん。
頭で知ってるのとは違う、感覚で分かってくる。
それが俺の財産にできるかな、ってところに俺は居ると思うんだ。
ここで、ぼんやりしてると、ああなっちまうんだなあ、と思う。
「そのカラクリなあ。これは口で説明するのは難しいよな」
そうなんだよな。
第二の人生とか、寝言言ってるとああなる。
人間が成長できるのは、実際は50歳までもないと思う。残りは、それまでのレガシーしかないわけだ。第二の人生なんて、突然始まるもんじゃないよな。体は衰えるし、まわりの仲間も減るし。
だから、今の俺達の年代で、いろいろ整理しなきゃね。これまでの人生の延長線上にしか、これからの人生も又ないんだからね」
「確かに、それはそうだな。老いても学べる人は、若い頃から学ぶことを知っている人だもの」
だよなあ。突然何かをできるわけではないわけだ。
それは、専門家としてはどう思う?
「まさに、お前の言うとおりだ。雛形なき者は、無いことを前提に生きるしかないと思うよ」
いやあ、なんとものな
結論が出てしまった、
男二人の夜。
そろそろ、店を出て帰ろうかとなりました。
次の日、ブランチに水道筋商店街で、
ハンバーガーを食べることにしたのです。
(まだ続くみたいよ。まあ、オッサン二人だからくどいわけよ!まあ、そういうもんでクリック!)