嵐の夜について考えてみます。
嵐の夜というのは奇妙なもので、
複雑なものをはぎ取って、純粋になる時間のようにも思うのです。
東洋医学に「房中術」というのがあります。
嵐の夜にセックスはしてはいけない、というのですね。
昔の嵐は、そりゃ大変だったろうから、
そんなことに耽っていては、
いろいろまずかったのかもしれません。
でも、私はそれ以上に意味があるんじゃないかと思うのです。
というのもね、あの気圧低下と暴風雨の中では、
いろいろ人間はおかしなことをしたり、
おかしな衝動に駆られたりするもんです。
まだ原稿待ちなんですが、
ここに寄稿してくれている「青さん」も、
嵐の夜は「特別なこと」してらっしゃいました。
そのうち書いてくれると思います。
今回、みなさんにご紹介したいのは、こちら
まずはブラッドベリの最高傑作ではないか、と思っている短編集。
ついぞ言えなかった言葉が、嵐の夜に語られます。
その言葉はなんだったのでしょう。
それは誰に向かって語られるのでしょう。
SF作家として名高いブラッドベリですが、
この短編集は、そんな狭いジャンルでは説明できない世界です。
ページをめくるのが惜しいくらいの、
美しさです。
訳者の小笠原豊樹の素晴らしさ。
実はこの人です。
こんな世界を書ける日本人はいないと思います。
そもそも、日本語に向いていない世界かもしれません。
それならば、小笠原氏の訳のすごさは、
生半可ではありません。
彼が、フィリップ・マーローを訳していたら、
どうなったのでしょう。
決して、「ロング・グッドバイ」なんて題名にはしないでしょう。
そんな逃げた訳。
ロング・グッドバイ (ハヤカワ・ミステリ文庫 チ 1-11)
- 作者: レイモンド・チャンドラー,村上春樹
- 出版社/メーカー: 早川書房
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惜しい人を亡くしました。
いまでこそ、停電も珍しいものになりましたが、
少し前まで、嵐の夜は停電と決まっていたものです。
- 作者: ジュンパラヒリ,Jhumpa Lahiri,小川高義
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/02/28
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静かな夜。
様々な人が、様々なことを語り始めます。
語らなかったこと、語ってはいけなかったもの、いろいろです。
そういう力がありますね、そんな夜には。
インドのベンガル人の血を引くイギリス女性の、
美しく悲しい文体。
世界の文学は、常に新しいものを生み出していて、
新しいエンターテイメントを構築しています。
その世界は、物語性だけにとどまらず、
読んでいる者を、特別な空間に連れてゆきます。
そういう読書を経験するには、
今の日本は向いていないと思います。
でも、もともとはかなり可能性の高い言語です。
まあ、気が向けばチャレンジしてみてください。
損はないですよ。
(ネタバレでしらける世界って、まあそこまでの世界だよね。なのでクリック!)