トライアンフ・スピードトリプルR2011年型。
もうね、ついてこられない人がほとんどなのも承知。
その上でね、世界のごく少数の方々に貢献することを目指す当ブログ。
わかんなくたって、お読みになりたい方々。
そんな奇特な方はこちらをどうぞ!
で、今回はもっとマニアなの方にふるのです。
機械のことわからない人。
オートバイのことわからない人。
まあ、そう嫌がらずに読んでってよ。
どっちやねんな!
メーカーが発表してる数値ってのはとても大事。
そこから何が読み取れるのかも大事。
ここに出ているのは、ストリートトリプルR2011年モデルのデータ。
Rがあるってことは、Rのないモデルもあるわけで。
このRが付いてるほうが偉いのか?って疑問ない?
なんでもR付いてるほうが速いとか、偉いとか。
以下のデータは「R」のない方のもの。
いろいろ差はあるけれど、注意したいのは車高。
Rは805ミリ。
Rなしは800ミリ。
シートで5ミリ違うってのは、たまたまやないわけです。
そこには、設計者の意図があるんですな。
私が今回触ったRは、以前試乗したものとは違ったわけ。
Rなしの方が、もっとしなやかでアベレージをあげやすかったわけ。
ところが、数値で見ると断然Rの方が上なわけ。
おまけにオーリンズが標準装備なのよ。
こういう場合、普通はRなしを買ったほうがいい。
Rが作ってことは、ライダーがこなさなすべきタスクが高いのね。
セッティングのしてもそう。
高価な品は、あるポイントでとてもスイート。
でも、そこを外すとガタガタになるのよ。
ここ大事!
で、いろいろやってるうちに。
とあるコーナーをかなり高速で曲がりながら
「なんか、これ知ってる感じするなあ」
とか思ってたのね。
ああ、あれだあれ。
NSR250みたいな車体に、100馬力以上を詰め込んだマシン。
高い重心から、一気にコーナーを攻めてゆく感じはTZRに近い?
こんなのね。
で、こいつのスペックを見てみると。
835ミリ。
この高さは普通やないわけね。
例えばセロー250。
オフローダーの傑作なわけだけど、あれが830ミリ。
初期の沈み込みが大きいから、実際はセローの方が低いわけ。
それを、結構硬めのサスのロードバイクでやるとなるとね。
ライダーの体重移動を含め、かなり要求度が高いってことなのね。
ライダーにしっかり要求する。
それがトライアンフの方向性なわけ。
これは1950〜60年代も同じこと。
この方向性は、ライダーが積極的にリヤ荷重をかける設定なのね。
後にストリートトリプルもその方向に。
最も過激なストリートトリプルのRS。
こいつね。
これのシート高はこの数値。
825ミリ。
排気量も上がって、馬力は20ほど上乗せ。
このオフィシャルサイトの動画。
本当にこんな感じで走るのよ。
はっきり言って、もっともレーサーに近い市販車の一つだと思うわけ。
ってことはさ、色んな意味で犠牲があるのよ。
その分、メリットもあるんだけど。
ということは、ライダーが上手くないと
ただただ乗りづらいバイクってことなのよ。
ちっちゃい女性なれど、ミスターカワサキの娘様。
もうね、天才的に上手いのよ。
どれくらいかというと、私がちょっと引くくらいに上手い。
普通の男性なら、100%ぶっちぎられると思うくらい速い。
やっぱ血筋ってすごいものがあるわ。。
じゃあさ、どうするかってなったのね。
そこの吉川さんという主と話しててさ。
方向性は、デイトナのカウルレス。
公道を走るレーサーよ。
ということで、フロントもリヤもバラバラですわ。
普通はやらない、本当のメンテナンスの世界に突入なわけよ。
多分多くの人が知らない世界なんだけどね。
ここからさきは、本当にマニアの世界なんですわ。
詳しい方だけ、感嘆していってください。
長いですよ。
では写真を中心に解説しながら。
まずは作業前。
Fフォークを外す。
ここからマニアの世界へ突入。
最近のバイクでは普通についているアジャスター付きのキャップ。
フォークの上に出てるあれね。
あれを適正値に合わせる。
意味わかります?
ノッチのカチカチいうのあるやない?
一番緩めても少し回るでしょ?
ってことは、最初のカチって言う音はどこで起きると思う?
工場出荷の状態だと、製造誤差や左右誤差があるのね。
だからそれを修正するわけ。
それが上の写真。
マニアの世界やわね。
そして、当然ステアリングもバラすわけ。
ここで注目なのは、この俗に「三股」と言われる部品。
この下のベアリングが「ボールベアリング」なのよ。
テーパーに比べ耐久性は落ちるものの、軽いハンドリングができる。
で、トライアンフはあえてボールベアリングを使ってるわけ。
製造後10年も経ってるから、当然グリスとかないわけよ。
それを清掃してきっちりグリスアップ。
このとき、箇所によってグリスを使い分ける吉川さん。
俺も初めて見るわ、この使い分け。
見る人が見れば、よくやるよなと思う作業。
胃の痛くなる世界。
気遣いの人である吉川さんは、あえて清掃前の汚い状態の写真を撮っていない。
これまで整備してきた人への、吉川さんなりの敬意なのであるな。
感心するわぁ。。。
あえてだもん。
普通はさ、ビフォー・アフターで、どうよ?
ってやるもんだと思うけど。
こういう人柄、好きやわ。
そして異音の正体を突き止めた吉川さん。
異音ってこれね。
何がギシギシ言ってんだろう。。
— 8マン (@chuff_de_gogo) 2021年3月4日
いじり甲斐があるぜ!
(俺がやるんじゃないんだけど)#ジャーニー #トライアンフ #ストリートトリプル #ミスターカワサキの娘 pic.twitter.com/sJMxLcCdK2
異音はいくつか出てたんだけど、その一つ。
キー付近のメインハーネスの劣化によるきしみ。
断線直前。ここをまず修理。
製造後10年も経ってると、意外なことにメインキーが摩耗している。
接触不足が起きないように、メインキーボックスをバラす。
この接点摩耗は比較的起きやすい。
キーホルダーにたくさんなにかつけていると、その重みで余計に起きやすい。
バイクのキーには、あまり物を付けないほうがいいですよ。
これは車も同じこと。
家の鍵とかは、別に持ったほうが良いです。
この接点を肉盛りして、再生。
メインキー内に、これまた特殊なグリスを塗り込み組み立て。
そしてFフォークを組み込み、センターを出す。
どう?
もうついてこられないでしょ?
でもね、実はここからなの。
これは基本整備だけど、Fブレーキの揉み出しってやつね。




で、ここからが本番というか。
まずはリヤのセンター確認。
当然のように、ホイールバランスも徹底的に。
さて、ここからがマニアの最も深い世界へ入るわけ。
ここまでは、マニアっぽいってだけ。
バイクのエンジンやスイングアームは、実は真ん中についていないのね。
一見そう見えるけど、実は設計段階でどっちに寄せるか決まっているのね。
そうでないと本当のセンターは出ないわけ。
つまり、サスのセッティングだどうだ言っても意味ないわけよ。
通常国産車は左寄せ。
このトライアンフは右寄せ。
それを統一してこそ、フレームが生かされる世界なのね。
言ってることわからないでしょ?
でもそうなの。
ってことで、スイングアームを一旦緩めて右に寄せて組み直し。
ちなみに、茶色の部分はサビじゃなくてカッパーグリス。
銅の粉が入ってるやつね。
スイングアームバラシは、専用工具が各車にあるわけ。
手元にないので、作っちゃった吉川さん。。。
それがこれ。
そしてバラす。
その内部を清掃。
そしてここもグリスアップ。
組み直す。
厳格にトルク管理して組んでゆくわけ。
そしてさらにセンターを確認。
ここまで来て、やっとリヤサスの調整が始まるわけですな。。
ついているリヤサスとリンクをバラす。
さっきの異音の正体その2。
このドライ状態やばい。
でもあなたのバイクもきっとこう。
それをグリスアップ。
しかも、このグリスも吉川さん秘蔵のグリス。
当然、車体側も。
当然リヤブレーキも清掃。
そしてオーリンズを軽くバラす。
そして異音の正体3。
このピロボールのグリス切れ。
薄っすらとサビも出始めている。
清掃して、グリスアップして組見立て。
取り付けてセンターを見る。
もう、馬鹿じゃないの?
と思わない?
でもね、ここまでやってから調整に入るのよ。。
レーサーは毎回これをやるわけよ。
ここまでやって、全体の半分くらいかしら?
この上に、各部のセッティングをこれから出すわけね。
オーリンズに限らずだけど、高価なパーツってのはこうやって組み立てられてこそなわけよ。
くっそ高いものなんだから、もう少しお金かけて本当の性能味わいません?
ナップスとかで、さっと交換して済ませてたらダメよ。
あなたは損をしているわけ。
そんなもんじゃないのよ、本当の性能は。
そして、この状態で動きはこうなるわけ。
足回りが決まってきた!#ストリートトリプル #トライアンフ pic.twitter.com/jzZDdvJp76
— 8マン (@chuff_de_gogo) 2021年3月15日
で、ここからの煮詰めが私の仕事というか。
感想を吉川さんに伝えて、それを機械的に改善してもらうわけ。
それが積み重なって、美しい車体になるわけね。
あー、読んでくれてありがとうね。
書いてて、私も疲れちゃった。。。
やっぱさあ。。。
馬鹿じゃないの、俺たち?
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