高倉健。
健さん、といえば絶対的にこの人なのです。
なにをやっても大したことないのに
その姿だけで神になった人であります。
その遺作「あなたへ」のロケ地に向かう青さん。
神様ってのはね、
あれしてくれたからとか。
こんなことやったから、とか。
そんなんじゃないですよ。
その存在。
そのものが人の心を震わせなきゃいけません。
その聖地、平戸の薄香漁港です。
ではさっそく！
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私はもともと、道路標識に身を任せて
走り回るツーリングスタイルでした。
無論、グーグルマップなどで大まかなコースを作り、
大体の道順は頭に入れた上です。
あまりかっちり決めてしまうと、
揺れや幅が想定の範囲に収まってしまう。
バイクには乗りたいのですが、
ただガソリンを捨てるだけの走行では意欲が微妙です。
もともと出不精なので腰が重いんです。
ついでに「どこか」には行きたい。
もしくは、どこかで「何か」をしたい。
そこで私の場合、大きな目的は持ちつつ、
「そこにたどり着くまで」
と
「そこから帰り着くまで」
は、
できるだけファジーな方が気分がいいということになります。
皆さん。
放浪と旅の違い、わかりますか。
目的があるか、ないかです。
芭蕉は旅。
山頭火は放浪なんですね。
これで「にやり」とできる人は、
よほどの方かどうかしている人です。
これ、「あなたへ」の中で
さぁ、ぬるっと「あなたへ」にシフトしていきますよ。
平戸の山の中を走るルートを進んでいくと、信号。
薄香入口と書いてあります。
後はもう、予定通り普通に走っていけば目的地。
迷いようがないんです。
で、一体私はどこを走っているんでしょうかねぇ…
今確認してみると、
どうやらどこかで左折していたようです。
右側には海が見えているのに、
そちらの方になかなか進んでいないことに
焦ったのは覚えています。
なに、バイクではよくあることです！
道の両脇には落ち葉が少し集まっています。
あまり交通量は多くないようです。
道幅と雰囲気が、
ここは違うと訴えかけてきます。
が気にしてはいけません。
動揺は事故の元。
いざとなったらUターンすればだけのこと。
焦りは禁物であります。
この辺りに親類でもないかぎり、
まず走ることはない道を
ゆるゆると進んでいくと十字路。
こういう場合は直進することにしています。
お、これは正解だったかな？
すぐに見えてきたのは小さな造船所、
そして海です。
どうやら、なんとか港にたどり着けたらしい。
少しホッとしました。
ゆっくり港を走っていくと、
遠くに見たことがある建物がならんでいます。
そして、、
ああ、この道だ。
健さんが、薄香漁港に入ってくる時に
走っていたのは私が今、まさに走っているここ。
このルートなんです。
怪我の功名ですな。
まさか、天下の高倉健も
私と同じように遠回りをしていたとは思いませんでした。
映画では山の上からの引きの映像で、
健さんが運転するキャンピングカーが
造船所の方から走ってくるのです。
同じ道を私も走っているということは、
知らぬうちに巡礼が始まっていた
ということになると思います。
お導きでしょうねぇ、
ありがたいことです。
休日の漁港なので、人の姿もまばら。
雰囲気的にどこに停めても問題はなさそうですが、
港にちょっと停めさせてもらいました。
えーっと。。ここだ。
この後ろの建物は、
物語終盤の舞台になる「浜崎食堂」だった場所です。
つまり、ここ。
私が踏みしめているこの土地、この場所。
これはもう十分に聖地であります。
さぁ、行きましょう。
本日の旅の目的、富永写真館を目指しましょう。
なんでもない漁港の風景ですが、
このカーブミラーは健さんが
郵便局から出てきた時、背景にあるミラーです。
ちなみに郵便局として映っている建物は、公民館でした。
そしてこれ。
おばさんが掃除をしている横を
歩いていく健さんのシーンに出てくる場所ですね。
誰ともすれ違わぬまま、歩みを進めていきます。
健さんが渡った側溝を渡ると
遠くにチラリ、と見えてきました。
ゆっくり。
昇殿するような気持ちになりながら
一歩、また一歩。
そしてたどり着きました。
現場に来なければ見ることができない、
フレームの外側の世界。
私の目の前にあるのはまさにそれでした。
健さんが眺めていた、富永写真館。
健さんが足をかけた階段。
ありがとう、と健さんがつぶやいた煤けた写真・・・
もともと涙腺がバカなのですが、
ぐぅっと目頭にこみ上げてくるものがありました。
誰かの生活の中に
そっと踏み入らせてもらっているような場所です。
騒ぐこと無くただ黙々と深呼吸。
聖地の空気を五臓六腑に行き渡らせて、
今年の聖地詣では無事達成できました。
正直なところ、
薄香のシーンに出てくる灯台は設定だけで、
健さんが田中裕子の絵葉書を飛ばすシーン。
202号線沿いのどこかであります。
下手すると我が家が入っているわけです。
そっちの聖地ならすぐそこなので、
今度行ってみようと思います。
駐車場が無いのが困ったものですが、
運動がてら歩くのもいいでしょう。
年明けだな、うむ。
二時頃、薄香を出発。
平戸市街を通過して帰ります。
平戸城は現在休業中ですが、
それでも多くの観光客で賑わっているようでした。
来た道を南下していきます。
気持ちが満ち足りています。
とりあえず、これで年内は納めでしょう。
近所は走りますが、何しろ12月は休みがありません。
今年のおバイクはコロナで予定がズタボロでした。
しかし、それでも楽しい旅はできたと思います。
できることなら、来年こそは
九州を飛び出したいと思うのです。
しかしそれもこれもやっぱりコロナ次第。
病魔退散。
疾病平癒。
今年の漢字は「病」なんじゃないかと
予想が出たところで、今回はここまで。
それではまた、次の旅で。完
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映画という世界のフレームの外には
現実という日常があるわけです。
聖地にも日常があります。
例えばメッカ。
こうなっております。
今年はこう。
しかし、健さんの聖地はこう。
偉大なり！
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