女性が綺麗なブーツを
履いているとしましょう。
これと言って華美ではないけれど、
明らかに美しい造形。
そのブーツは大抵サルトルです。
フランスで生まれたジョッキーブーツ。
確かに美しく、
値段もなかなか素晴らしく高価。
時々登場するアンジェリーナから、
かかってきた一本の電話。
サルトルを買うかどうか?
そこから、今回の話は始まります。
「私さあ、8マンちゃんに聞きたいことあって」
「ふーん、何?」
「私、サルトルのショートブーツをさ」
「おお、買うのか?」
「ずっと欲しくてさあ」
「買えるなら買えば?」
「でもね、私みたいなのが買ってもいいのかなって」
「何言ってんだ、このカス!」
「なんで、カスよ!」
「サルトルを買うなら、サルトルが似合う女になりゃいいんだよ!」
「ああ!そっか!」
「そう、それくらいの気合で買うもんじゃないかな」
「あのレベルだとね」
「そうそう、メンズならブランキーニより上のレベルだろ?」
「安くなってるのを見つけてさ、サイズ不安だからバーニーズで試着してこようかと思ってさ」
KOBE STORE - バーニーズ ニューヨーク神戸店 | 店舗情報 | BARNEYS NEW YORK
「お前、性根が卑しいね。サルトル買うの止めなさい!」
「な、な、なによ。急に!」
「サルトルを買うってのは、カネがないわけじゃないわけだ」
「う、うん、まあそう」
「とっても贅沢品なわけだ、ああいうのは」
「は、はい。そうだね」
「世の中には、安い靴もたくさんある」
「う、うん」
「安くて良いのもたくさんある」
「あ、はい」
「しかし、君は、高価でゴージャスな靴を買おうとしているわけだ」
「そうです」
「バーニーズで試着するなら、バーニーズで買ってやれ」
「でも高いよ」
「ネットでも高いよ、基本的に」
「まあそうだよね」
「でも数万ケチりたいわけだ」
「そりゃケチりたい」
「その根性が気に入らねえ!」
「なんでよ!」
「店ってのは、客が育てていくもんだ」
「わからなくもない」
「で、客も育ててもらうわけだ」
「ボンドの話で言ってたよね」
「せや、そこや。バーニーズを利用して、ネットで買うことが賢いことやとでも思ってるんか?それはちょっとちゃうで。みっともない、もしくは卑しい行為やな」
「マジ厳しい!」
「イヤやったら、ネットで買ってギャンブルしたらエエねん」
「でもサイズが。。」
「お前、サルトル買うガッツがホンマにあるんか?」
「・・・」
「しかも、あれレザーソールちゃうか?」
「そうやねん、そこも教えてもらいたいねん」
「靴ってのはな、買ってから履く前にやらなあかんことがある」
「えーそうなん!?」
「そういうことを覚えていくのが、ああいう靴を履くってことや」
「私普段履きにしたいんだけど」
「そういうのがカッコええと思ってんのか?逆に卑しいことやぞ!」
「なんか、たかが靴の話が大きな話になってきてへん?」
「今、なんて言うた?」
「え?」
「たかが靴言うたよな?」
「う、うん」
「たかが靴やとう?」
「え、ええ。。」
コンコンコン
「誰か来たわ、ちょっと待って」
「こんちわー!アラブ語でマルハバー!」
「おー、まさかのマルハバ!」
「近所来たからちょっと寄ったで。美味しいコーヒー飲ませてーや」
「いまちょっとブーツでもめてんねん」
「なになに、どうしたん?」
電話の向こうで、アンジェリーナが
「最悪な展開ちゃうの・・」
(実はマルハバも靴マニア。さあ、アンジェリーナはどうなる?期待でクリック!)

- 作者: ジャン=ポールサルトル,Jean‐Paul Sartre,松浪信三郎
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
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