ブエナ・ビスタ・ソーシャル・クラブ。
略してBVSC。
私にはとても思い入れのあるバンドです。
私の弟が、40歳にもならずに死んだ時、
葬式の手配やら何やらで、
ずっと私の感情はフラットでした。
ひと段落したころ、
当時飼っていた老犬と、
車で移動していました。
その時、Chan Chan が流れていて、
信号待ちで突然涙が流れてきたのです。
その翌年、その犬も死にました。
そういう経験をしていたので、
なんとなく、聴く度に思う所はあります。
CDを買ったのは、まだ20世紀のころ。
陽気なリズムに、ぬぐいされない
奇妙に悲しい旋律。
しかも、しきったのはライ・クーダー。
- アーティスト: オマーラ・ポルトゥオンド,コンパイ・セグンド,イブライム・フェレール
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不思議なほど大ヒットして、
日本にも公演に来たはずです。
私は、行く機会もなくはなかったのですが、
なんとなくがっかりしそうで、避けたんです。
その後映画もできました。
監督は、あのヴィム・ベンダース。
パリ・テキサスや、
ベルリン天使の詩
の監督です。
公開が2000年前後だったと思います。
でも、やはり観てなかったんですね。
なぜかはわかりません。
それが先日、観たんですよ。
この映画。
キレイに加工されすぎて、
批判が出たので、あえてフィルム映像に
近づけたバージョンを。
ブエナ★ビスタ★ソシアル★クラブ Film Telecine Version [DVD]
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観終わって、画面に向かって、
自然と拍手をしている自分がいました。
かつては一流だったミュージシャンが、
時代の中で消えていき、普通の日常を、
ただの老人として送っているのです。
それをライ・クーダーが発掘し、
録音するわけです。
そして、その音楽は高く評価され、
最終的には、あのカーネギーで公演します。
その単純な物語が、
何か胸の奥を深く動かします。
私は、そのカーネギーのライブ音源も
手に入れました。
ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ ライヴ・アット・カーネギー・ホール
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ライブとは、かくも素晴らしいものなのか!
二枚組のCDを、飽きることなく、
聴き込めたのは久しぶりです。
ジャケットも洒落てますね。
デビュー盤と同じ構図で、
ニューヨークで撮影しています。
今や、主要メンバーはみな亡くなり、
なんとも熱く哀しい
旋律だけが残りました。
人生の晩年に、
くちなしの花のような香りを
艶やかに残した老人たち。
「熱帯の陰は黒い。その陽射のために」
と言ったのは、サマーセット・モームです。
この映画も音楽も、
深く感じるものが、
多分、日本人にはあるような気がします。
なぜかはわかりませんけれど。
(こんな曲を聞きながら、ラムをエルダーフラワーで割って飲んでみないか?)