さて、アーネスト・サトウの話も、
ずいぶん長くなってきました。
いい写真を簡単に撮りたい、
そんな人には、がっかりさせたかもしれませんね。
まあ、そんな話はよそで探してもらいましょう。
そろそろ、いったん終わりにします。
今回は、アーネストの妻である、
佐藤年さんのインタビューをまとめてみます。
同時に、アーネストの写真集から、
いくつか抜粋も。
例によって、文献はこちら。
この中で、キュレーターの福のり子さんが、
年さんに行ってるインタビューからです。
福のり子さんとは、当時イケイケのキュレーターで、
ニューヨーク近代美術館からキャリアを始めた、女傑です。
今は、大学の先生やってるみたいですね。
20世紀の終わりころ、
相当尖がっていた人です。
その福さんが、アーネストの妻である
佐藤年さんに、いろいろ聞いているのです。
見事なインタビューです。
興味のある方は、上の雑誌に載ってますので、
詳細はそちらがよいかと。
私が興味を持ったのは、
アーネストの、あらゆる人への、
対等な意識でした。
目上でも、目下でも、基本丁寧な敬語。
アーネストが病気になった時も、
彼は医者にこう言います。
「あなたは威張ってはいけない、我々は平等だ。あなたは僕の病気を治してくれて、僕は一生懸命あなたに協力して病気を治そうとします」
当たり前のこと言ってるようで、
これすごいこと言ってますよね。
実現できたら、実に素晴らしい。
いい治療関係が結べたでしょうね。
この平等意識は、
時にアーネストを窮地に追い込みます。
年さんはアーネストに
「日本で写真家として活動するなら、写真家協会に入り、
重鎮の大先生への挨拶まわりをしなさい」
と言うんですが、
アーネストは納得しないわけです。
「なんで、頭を下げなきゃいけないの?僕らは平等だろう?」
って感じで。
徹頭徹尾、モダニストなわけです。
これ、アメリカ流とも違うと思います。
前回書いた、モダニズムの
哀しさのような気もします。
彼が大学人になってからも、
そのモダニストとして、周囲と衝突します。
ある予算会議で、機械購入費が
予算10万だと言われたわけです。
アーネストは10年予算要らないから、
今年100万くれと言うんですね。
その理由は、オメガ(!)の、
引き延ばし器が100万だったからなんです。
オメガなら確実に10年はもつ。
そして、学生は
「世界にはこんな素晴らしいものがある」
と知ることができると。
もちろん、大紛糾です。
「学生には、安物でいいじゃないか」という人に、
アーネストは激怒します。
「僕は、自分の知っていること、すべてを教えたいんだ!その結果どうするかは学生自身の選択だ。でも、学生だから安物でいいってことは、絶対ないんだ!」
そんなアーネストですから、
周囲も心配するわけですね。
年さんも、俵屋の女将ですから、
世間の、そんなことよくわかるわけです。
結果、アーネストは冷遇された、
とも言えるでしょうね。
それでも、彼の授業は常に満員だったそうです。
年さんが、アーネストから学んだことは、
常に最高のものを見ること、だそうです。
最高のものを見ないと、下のものが分からない。
下だけ見ていたら、上は絶対に見えない。
これは視野の広さだと思うの。
これが彼に教えられた非常に大きなことです。
これ、本当にそうですね。
1999年の雑誌ですけど、
今の時代にも言えることだと思います。
アーネストは、多くの芸術家が眠る、
葬られたかったようです。
ここには、ストラヴィンスキーも眠っています。
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祖国を失った、多くの芸術家が眠る島。
しかし彼は、京都に眠っています。
ハーフとして戦前に生まれ、
戦後アメリカにわたり、
日本に「来日」した。アーネスト。
異邦人として苦悩しながら、
モダニストとして、
精神と肉体をボロボロにしていった、
アーネスト。
ずいぶん長いおしゃべりを
してしまいました。
ある時期の、この日本に、
彼のような芸術家がいたのです。
それが私にはとても嬉しく、
また哀しい話であると思います。
そのことを少しばかり、
お伝えできたのであれば、幸いです。
さて、またいつもの、
ふざけた記事を書こうと思います。
ありがとうございました。
(いやホント、この写真集は手に取って見ていただきたいですね。で、クリック!)
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