友人の奥さんに「ちょっと母乳飲ませてくれない?」と頼んだ話。
ある日言ったんですよね。人妻に。
「ちょっと母乳飲ませてくれない?」って。
意外なことに快諾されましてね。
まさか、そんなこと!
とか思った方、まあ自然ですよね。
しかし、そこには深~い思索があったのです。
ではさっそく。
言っときますけどね、
お題からエロを想像した人は、
心根の貧しさを恥じながら生きていってください。
でもまあ、そう思われても仕方ない。
そんな風に意図的に書いたのですし。
もっと具体的に場面を書いておきましょう。
あれはまだ20代の頃で、
私は既に今の仕事についていました。
古くからの友人夫婦に
初めての子供が生まれたわけです。
お祝いに行って、雑談中に母乳の話になり、
それを冷凍して外出用に
ストックしてあるというんですね。
そりゃあ、私も飲んだはずです。
生まれたころにね。
おぼえているわけないじゃないですか、
そんな味。
そこで、提案してみたのです。
「純粋に職業的な好奇心からなんだけど
ちょっと飲ませてくれない?」と。
今から考えると、よく友人も怒らなかったと思うのですが、
奥さんが
「全然問題なし!8マンちゃん飲んでみてみて!」
と軽い返事。
旦那のほうは、腹を抱えて笑っておりました。
それで解凍したのをコップでいただいたわけです。
これには、実は心理学の世界で有名な
「酸っぱいオッパイ、甘いオッパイ」という
という仮説の実験でもあったわけです。
その仮説はこの人のものです。
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すごく簡単に言いますと、
お母ちゃんが穏やかな気持ちの時は
子供に「甘いオッパイ」を出し、
感情的に不安定なときは、
子供に「酸っぱいオッパイ」を出すはずだ、
というものです。
子供がぐずってるときに、
お母ちゃんがオッパイを上げても、
お母ちゃんが不機嫌だと、
子供は授乳を拒否する背景とも言えるでしょう。
これは象徴的な話ではなく、
事実そうであると言ったわけです。
ねっ、心理学って頭おかしい世界でしょ?
迂闊に入っちゃダメだと言ったでしょう?
まあ、メラニー・クライン自身が、
かなりキテイル人なので、
鵜呑みにはできないんですけどね。
けっこうな破綻者で、気の毒な人生です。
まあ、若き日の駆け出しとしては、
そもそも母乳って、どんな味だ?
と思っていたわけです。
そこに、千載一遇なチャンス!
古くからの友人なんで、私がかなり変なこと言うのも、
だいたい分かっていてくれていたから、と言うのもあったんでしょう。
さて、ふつうのマグカップに入った、
母乳を飲んでみました。
こんな感じですね。
こんな感じの、ごく普通のマグカップでした。
では、飲んでみます。
グビリ。
えーーー!
こんなに薄い味なのーーー!!!
スプーン一杯のクリープを、
かなり大量のお湯に溶いた感じ。
ほう。。。。
仮にクラインの仮説が正しいとすれば、
赤ん坊の神経回路は、とんでもなく
繊細ってことになります。
ここまで薄いと、大人の味覚では
酸っぱいだの甘いだの、その差を理解できないはずです。
なるほど、生まれたての生命とは、
この差に一喜一憂するのだなあ、と、
不思議な感慨にふけっておりました。
深淵、あまりにも深淵。
飲み終え、しばし思考の渦を漂流しておりました時、
その友人がこう言ったので。
「どや、なかなか美味しいやろ!?」
君は、別の意図で楽しんでおるのだろう?
同じ意図で私が楽しんだら、
それは問題であろう?と言いかけてやめました。
そして、奥さんが続けて
「どう?私のオッパイの味?」
まあ、提供者ですから、その疑問も当然でしょう。
私には答える責任があるとも思います。
でもね、どう答えりゃいいんでしょう?
答え方によっては、長年の友人関係も壊れかねません。
英語かフランス語で逃げようか、
それとも、「美味しいな」と答えるべきか。
いや、それはまずいでしょう。。。
結果、便利な日本語を思いつきました。
「いやあ、おつなもんですなあ!」
全員で笑いました。
生命の深淵に触れ、そのカオスを象徴的に言語化する。
日本語の素晴らしさに、ちょっと感動した記憶でもあります。
でも、うかつに言わない方がいいですよ。
母乳飲ませてくれ、なんてね。
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