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アーネスト・サトウを知ってるかい? その4「ものそのもの」を撮れ!

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ながながと、アーネストの出会いや、

なんとか作品集を手にいれた

経緯を書いてきました。

chuff.hatenablog.com

よろしければ順に。

 

さて、今回はアーネストの直弟子の、

森村泰昌氏の解説で、アーネストの写真論を

ザクッとご紹介しましょう。

 

 もちろん、参考文献はこちら。

 

芸術新潮 1999年 06月号 [特集 カメラ好き集まれ!]

芸術新潮 1999年 06月号 [特集 カメラ好き集まれ!]

 

もちろん、私も持っています。

雑誌ですので、手の入るうちに

買っといたほうが良いですよ。

煽るわけではありませんが、

なくなる可能性ありますからね。

実際、アーネストの講談社版は、

もう売り切れたようです。

これ買っておいて、損はないですよ。

 

では、森村氏が受けた講義の中で、

最もアーネストが繰り返した言葉を、

ご紹介しましょう。

 

「ものそのもの」

 

と言う言葉です。

これは、作品集の中でも書かれています。

彼は英語の方が得意だったらしく、

 

The thing itself

 

と言ってますね。

では、ものそのものとはなんでしょうか?

 

普通に撮った写真でも、

プロが撮った写真でも、

「なんかいい写真」だと思う感覚は、

理論的に後から説明できる、というのが、

アーネストの写真理論の骨格です。

しかし、その時にはそれはわからない。

なので、サッと撮ってしまう。

後から考える。

その瞬間を、「決定的瞬間」と、言ったのです。

決して事故の瞬間とか、大参事の瞬間とか、

そういうものではありません。

「ものそのもの」がそこで現れる、

その瞬間を撮れ、ということですね。

 

彼が授業の題材としてよく使ったのは、

個人的にも交流があったらしい、

アンリ・カルティエ・ブレッソンの写真です。

図書館なんかでも、

普通に見つけられますので、

この本でなくとも

ブレッソンの作品に触れることは、

大事だと思います。

ドキュメント映画のこれとかも、参考になりますよ。

 

このDVDの表紙にもなっている写真、

見たことある方も多いのではないでしょうか。

サンラザール駅の裏、とかいう写真です。

そのアップはこちら。

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とても有名な写真です。

面白い構図ですが、一体どこが

 

「ものそのもの」であり、

「決定的瞬間」なのでしょうか?

 

アーネストによると、こういう理論になります。

図で説明すると、こうです。

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一枚の写真の中に、

実は反復するイメージが潜んでいて、

それを見にした撮影者は、直感的に

「なんかいい!」と感じるんですが、

実はその背景となるイメージの広がりは、

その時点では意識されていない。

している暇がないわけです。

「決定的瞬間」にシャッターを押すわけですからね。

 

この相似形のものが、いくつも潜んでいることを、

アーネストは、ツインイメージ、と説明しています。

これらがたくさん含まれていると、

人間には、なにか精神の広がりを感じる、

写真ができるけども、それはあっという間に消えるもの、

と考えていたようです。

 

ですので、狙ってそのイメージを、

意図的に作るとすれば、

それは「決定的瞬間」ではなくなるので、

陳腐に見える写真と言うことになります。

 

さて、このような考え方は、

アーネストが、モダニズムという時代の人である、

ということと不可分ではありません。

 

モダニズムと言う考え方は、

テクニックや技術が、世界を説明しうるという、

非常にロマンティックで、同時にクールな発想です。

私の考えでは、アーネストはモダニズムの人とは思えません。

どちらかと言えば、それに理解を示しながらも、

そう割り切れない人だったのではないかと思います。

 

さあ、このツインイメージの話。

すぐには理解できないと思います。

しかし、いったんつかめれば、

抽象画や、理解不能なアートへの、

最初の一歩を踏み出せるはずです。

 

好きな対象を撮るのではなく、

その対象の「そのもの」が発露した、

「決定的瞬間」に撮影すること。

まずここからです。

 

分かりづらいことは承知なので、

もちろんこの話は続きます。

chuff.hatenablog.com

(まあ、読んでもらった方がはやいんですけどね。クリックで勉強してみませんか?)

 

ポートレイト 内なる静寂―アンリ・カルティエ=ブレッソン写真集

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こころの眼―写真をめぐるエセー

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