前回ナタリーの身を案じて自己犠牲に燃えた焚火の男。
男はたったが、心は折れた。
さあ、再び金の唸る街ドバイに到着します。
行きで、光輝いたロレックスの壁時計は、
今度は何色に見えるのでしょう?
ではさっそく。
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CAさんに起こされ、オレは目を覚ました。
オレはシートベルトを着用するよう促された。
マンチェスターを出てから、
二度の機内食の時以外、ずっと寝ていた。
行きの機内で全く寝付けなかったことが、
ウソのようである。
人間、本当に疲れている時は、
案外どんな環境でも眠れるものなのだ。
それでも目を覚ましてみると、
オレの席はやっぱり息苦しい。
まぁそれももう少しの辛抱だ。
ドバイはもう目の前である。
機体は無事ドバイ空港に着陸した。
時刻は現地時間で深夜の0時だ。
飛行機を降りターミナルへと向かう。
空港内は深夜にもかかわらず、
多くの人で混雑していた。
人種は相変わらず様々だ。
乗り換えまでは1時間半ほどある。
それほどのんびりとはしていられない。
オレは早々にスモーキングラウンジへと向かった。
カネの唸るドバイでは、
スモーキングエリアなどと、セコイことは言わないのだ。
ドカッと、ラウンジなのだ。
機内で目覚めてから、
無性にタバコを吸いたかったのだ。
ラウンジ内へ入りタバコに火をつける。
大きく吸い込み、ゆっくりと煙を吐き出す。
ウマイ!
頭も体もかなりシャキッとしてきた。
すると横の方から
「すみません。火貸してもらえますか?」
と日本人女性に声をかけられた。
行きに寄った時のドバイでは、
オレ達以外で日本人は見かけなかった。
その先入観から油断していたため、
少し驚いてしまった。
話をしてみると、
観光でドバイに来てその帰りなのだという。
あぁ、そうか。
もうすぐ成田行きの便が出るのだ。
他に搭乗待ちする日本人がいても、
何ら不思議ではない。
ラウンジを出て搭乗ゲートの前に行くと、
今度は日本人オバちゃんのツアー集団に出くわした。
オバちゃん連中は両手いっぱいの土産物を手に、
あきれるほどのデカイ声で日本語全開だ。
なんか
一番最初の時に感じた、
ドバイ空港の雰囲気と違う。
なんだろう、
日本が近づく安堵感とともに、
妙なムカつきがオレの中に湧き上がりつつあった。
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ああ、これね。。
あれなんなんでしょうね。
私は「税関ムカッ」と呼んでいます。
ある時間、そうですね一週間くらいでしょうか、
海外で過ごして日本に帰るとき、
言いようのない抑うつ感と焦燥感に襲われます。
一方で、帰国ハイテンションの方々もいらっしゃいます。
若い人やご婦人に多い気がします。
じゃあ、数年とか、数か月ならどうかというと、
焦燥感はないですけど、妙な抑うつ感は、やはりあります。
大声のオバちゃんたちですが、
彼女たちの旅の半分は、帰ってから始まるのです。
土産話をすることが目的と言ってもいいでしょう。
それへの、ほとばしる情熱が、
いつもよりさらに大声にさせていますね。
この「税関ムカッ」、
割と日本人では共感できる人も多いようですが、
日本人以外では、私は聞いたことありません。
私の知り合いの外国人たちは、
「ホッとするんじゃないの?」とかいいますね。
では、なんなんでしょう、あの感覚。
実はものすごく複雑な感覚なのかもしれません。
さて次回、さらっと終わる旅の話。
(ついに、終わってくれるのか。長かったなあ。。ねぎらいでクリック!)