CHUFF!! チャフで行こうよ。

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CHUFF!!ってのは、「おっ、なんかいいよね!」って意味です。チャフっていきましょうよ!

なごり雪

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北の国から投稿が来ました。

 

あちらは、もう降るところがあるんでしょうか。

まあ、雪というのは心象風景ですからね

 

では、さっそく。

 

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陽が眩しい。低くなった陽が斜めに俺を射る。

吐く息も白い。振り返れば、影が長い。

「もう、3分か」

 

俺は、五年ぶりに帰省する女を、迎えに来ていた。

そういえば、俺は昼飯も食っていないじゃないか。

昼飯も食わずに、5年ぶりの女を迎えに来るなんて、

随分おめでたい話じゃないか。

おまけに、そんなこと考えている間にもう3分もたっちまってる。

 

3分もありゃあ、カップヌードルが出来上がるし、

タバコも一本吸えるだろう。

おまけに、随分と冷えるじゃねえか。


気がつきゃあ、いつもこうだ。

夏がとっくに過ぎてしまって、

秋があるのかどうかも分からなくなって、

あっという間に寒くなりやがる。

 

ガキの頃、母親に連れて行ってもらった喫茶店で、

初めて飲んだクリームソーダのような夏は、

 

どこに行きやがった!

 

あの女にしてもそうだ。

五年も帰って来なかったんだから、

いっそ帰ってこなきゃあいいんだ。

なのにだ、朝っぱらから電話一本で俺に迎えに来てくれ、

と言えるその神経が分かんねえ。

んでもって、それで迎えに来ている俺は余計にわからねえ。

俺は、どうして

「いいよ、何時だい?」

なんて言っちまったんだろう。

 

暇だからか?

 

いや、違うな。暇じゃあない。

あちこち電話して、なんとかこの時間に間に合うようになったわけだし、

現に昼飯を食いそこねちまってるじゃねえか。

 

腹が減って、イライラしてスニッカーズでも噛じろうか、

って気分になってるじゃねえか。

売店で売ってんだろうか。

でも面倒だな、それも。

 

ああ、なんで来てんだろうな、俺。

 

 

あっ、そうか、一発やりたいんだな、俺。

 

させてくれるかな。くれないんだろうな、きっと。

 

ちょっと待てよ、

そんな理由でわざわざここに来てるのか、俺?

クソ寒いってのに。

そんなわきゃあないよな。

それほどガキでもない。

 

じゃあ、なんだってんだ、俺?

おまけにここは禁煙じゃねえか。

昔は電車の中でも吸えたっていうのによう。

 

いろんなとこでタバコも吸えなくなったな。

映画館でも、禁煙マークはあったけど、みんな普通に吸ってたよなあ。

 

ああ、それにしても腹が減った。

別のことを考えよう。

何がいいかな。

寒いから,温かいものでも考えよう!

 

鍋かな、酒かな、コタツかな。

 

ちょっと待てよ、俺!

なんだこの年取ったオヤジの連想じゃねえか、

気に入らねえな。

人生を降りちまったジジイは、

それくらいしかねえのかもしれねえな。

 

でも、いくつからジジイとババアになるんだ?

 

俺、いくつになったっけ?

 

うわあ、マジか!

あいつは?

うわあ!えっ、そんなになるのか!

俺もあいつも、

 

 

 

 

ジジイとババアじゃねえか。

 

 

 

ってことはだよ、

ジジイがババアを、やらせてもらえるかな、

って待ってんのかよ!

 

洒落なんねえな!

 

えっ?

やっぱしたいのか、俺。

なんか、とてもがっかりだな、俺。

 

雪が降ってきたよ。

雪だってさ、降る時を知るんじゃなかったけ?

降るなら、もうちょっと後か、

さらにもっと後で、

春先に降れば様になるのに、もう来たのかよ。

 

なんだよこれ、なんだってんだよ。

 

腹減ったしさ。

 

あっ!夏を名残って降る雪か?

 

うわー強引だな、俺。

強引に何を納得すりゃあいいんだ。

 

雪が降るってことは、何なんだよ?

つまりは、夏が終わったってことなんだろうな、

そうだろうな、俺。


終わったんだな、俺。

さて、どうしようかな、俺。

とりあえず、飯でも食うか、俺。 

 

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いろいろ、あっという間だよね。

 

(今年も残り三か月切ったわけだ。秋と冬の予感を感じを一瞬でも感じたら、クリック!)

 

 

 

なごり雪

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枯木灘 (河出文庫)

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