生命と引き換えに写真という芸術を確立した男。
富と名声におぼれながら、時代を作った男。
その4回目です。
今回も参考文献はこれです。
- 作者: パトリシアモリズロー,Patricia Morrisroe,田中樹里
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2001/02
- メディア: 単行本
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前回は、パティ・スミスとの出会いと別れでした。
では、その後の彼の動きを追っていきましょう。
1975年ころ、ロバートは成功へのコネを掴み始めます。
1人は前回も登場した、サム・ワグスタッフ。
このかっちょいいオッサンです。
有り余る資産と審美眼で、ロバートを牽引します。
もちろん、セックスパートナーでもあります。
そしてもう一人が、メトロポリタン美術館のキュレーター、
ジョン・マッケンドリーです。ネットに写真がないので、手持ちのを。
彼が死ぬ数日前に、ロバートが撮影したもの。
死因は、まあ既におわかりでしょうが、エイズです。
当時は免疫低下の奇病と思われたようですが、後に判明しています。
キュレーターというのは、馴染みない言葉だと思います。
日本的に言うと「学芸員」となりますが、日本の場合は「査定」をしません。
それに比べてキュレーターは、彼ら自身が相場師でもあるような仕事をします。
ロバートは、彼とも性関係にあったようですね。
この二人との関係をベースに、彼は美術界への足がかりを掴みます。
ロバートも画家として成功をしたかったけれど、そこで弾かれた人だったのです。
それゆえ、「写真家」という肩書をとても嫌います。
カメラマン、もしくは写真家、という呼び方は、美術界ではタイムキーパーレベルのものです。
「器用なんだね」で終わられる肩書です。
彼は父親に
「僕はアーティストとして認められたいんだ。写真家じゃないよ」
といいます。
現に彼は、カメラのことを生涯ほとんど知りませんでした。
被写界深度とか、絞りとか、現像とか、全く無関心でした。
それらは所詮「職人」にさせればいいこと、と考えていたようです。
これは、当時あまり珍しいことではありません。
有名なところでは、アンリ・カルティエ・ブレッソンも現像のできない人です。
この映画の中で、気に入ったプリントだけサインするシーンがあります。
日本の言葉に「職業に貴賎なし」という屁理屈がありますが、
アレを作ったのは実は明治政府と言われてるんですが。。
まあ、それはいいでしょう。
でも世界中で、職業に貴賎はあるという前提で、
社会が成り立っていることは知っておかれたほうがいいですね。
今でもアメリカでは
「そんなことじゃ、ずっとマクドナルドでしか働けないわよ!」
と、学校の先生が言います。これは差別に当たらないわけです。
なぜならば、その表現が「不当」ではない、ということなんですね。
同じように、アーティストと写真家の間には、明確な差があるのです。
ギャラで言うと、桁が3つくらいは変わる世界です。
そこで、アーティストへの切符をつかむために、
彼は次々と性関係を結び、ゲイの世界にのめり込んでいきます。
そして、それを発表し続けます。
ついに1977年、高名な画商でコレクターのホリー・ソロモンのギャラリーで、
有名な個展を開きます。
お金持ち用と、サブカル用とを、使い分けた個展です。
もちろん、サブカル個展は、ハードゲイの世界です。
これがその、宣伝用のカードです。
そこで成功した彼は、よりハードコアを求めてゆきます。
彼の場合は、それは黒人ゲイとのセックスだったようです。
もちろん、ドラッグ付きのキメセクです。
「一度黒人にはまると、もう引き返せない」
と公言するようになり、交際関係が広がっていきます。
当時、エイズはまだ未知の病気として、確認はされていませんでした。
しかし、パンデミックは実際には起きていたのです
ロバートも、もちろんその渦中にいたのです。
(なんか、マズイ展開かも知れない予感。。オレの好印象が。。ええい!そこでファックでクリックだ!)
その5に続きます。
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