ボクは古い車に乗っている。
車はこれしか持っていないので、趣味とは言いきれない。
買い物だって行くし、ラーメンもこれで食べに行く。
雨の日以外は。
別に過保護にしているわけではない。
そんなことをすると、錆びるのだ。
それでなくともあちこち壊れるので、
雨の日に乗るなど以ての外、なだけである。
切実なのだ!
なーに、たいした事じゃない!
途中で降られちゃったら、
その後、大いなる手間をかける必要がある。
仕方ないのだ。古い車なのだから。
なーに、どってこたあない。
もちろんエアコンはない。
パワステも当然無い。
真夏の運転室は気温40度である。
なーに、いい汗かこうぜ!って感じ。
窓を開けて、風の涼を楽しむ事ができるオマケつきなのだ。
でも心配は要らない。
ヒーターは強烈に効くのだ。
時には真夏にもヒーターをかけるのだ。
オーバーヒートを防げるから、大事なポイントだ。
寒くもないのにヒーター使うなんて、全くの贅沢三昧!
乗る度に計器類を常にチェックする。
しかし、計器類自体が壊れていることもある。
信じてはいけない。
なーに、そもそも信じることが間違ってるとか、考えた方がいいよ?
ブレーキが正しく効くと信じてはいけない。
燈火類はスイッチで着くと思い込んでもいけない。
ボンネットが閉まっているはずと思うなんてのは、夢幻である。
窓は外れるものであるという前提において、
外れないように注意するものである。
ワイパーに至っては、動いてくれ!と祈るものである。
しかし、それは使わないほうがいい。
それより、天気予報に常に注意し、雨雲の位置を確認するのである。
ビバ、デジタル技術!
これら全ては、カッコよさのためである。
うむ、カッコイイのである。
楽しい、などと甘いことは言わない。
カッコイイにまさるパッションがあるだろうか。
いや、ない!
ある日車を出していたら、ランドセルを背負った男の子と女の子がいた。
男の子は
「うおー、すげえー、あの車が一番好き!大人になったら乗るんや!」
女の子は
「じゃあ、ドライブ連れてってくれる?」
男の子恥ずかしそうにモジモジじながら
「う、うん。。」
少年よ、君が乗れるようになる頃、きっと僕はもう乗れなくなってるだろうね。
少年よ、ウェーバーのキャブレターは、いい音するんだぜ。
少年よ、プラグをこまめにチェックするんだよ。
少女よ、素敵なドライブになるといいね。
少女よ、ツインカムの音に聞き惚れる女性になっておくれ。
少女よ、時には彼から運転を変わってもらったら、それも楽しいぜ。
でもね、これは一番大事なことだけど、エアコンないんだぜ!
そして、これがもっと大事なことだけど、君たちが今思ってる以上に、
カッコイイんだぜ!
などと優しく思ってしまう自分に、多少照れる。
40年以上前に、海を渡ってきた車。
ずっと誰かに大事にされたであろう車が、俺の手元にある。
勿論俺も大事にする。
理由はね、カッコイイからなの。
ほんと、ちゃんと動いているこの車は実にカッコイイ。
(なんでいつも工場に入ってる写真多いんです?と聞かれました。察する文化は消えたのでしょうか)
ちゃんと動いてさえいてくれればね。
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